自衛隊は日本を守れるか その1 核攻撃編

最近、政権が変わったせいもあって、自衛隊の能力についてああだこうだと言及されることが多いので、ここで東アジアの軍事的状況についてと自衛隊の対処力について意見を述べよう。
 
まず、核戦力であるが、日本は核戦力を全く持たない。逆に、東アジアでは、ロシア、中国が実戦レベルの核戦力を配備済みで、北朝鮮はあと一歩で実用化するレベルに近づいている。
また、在日米軍は核戦力を有していないが、中国やロシアを射程に収めるSLBMを搭載した戦略原子力潜水艦を常時パトロールさせているし、米本土のICBMも東アジア周辺各国に届くものとなっている。
米国のICBM ミニットマン
 
軍事について語るとき、この核のカードを考慮するかしないかによって大きく変わってくるが、現在のところどんな種類の核兵器も外国に対して使用すれば、それは決定的な報復を招くであろう。
 
ちなみに、弾道ミサイルに対する防衛は今後10年内に決定的な能力を持つことは無い。BMDなどが相手の攻撃力を防ぐと信じれるようになるのは当分先のことなので、ここではこれを考慮しない。(通常航空戦力と複数の弾道ミサイルの同時発射、おとり弾頭、多弾頭ミサイルなどの組み合わせた攻撃を防ぐことは難しい)
 自衛隊のBMDの説明図
中国あるいは北朝鮮が日本に対して限定的であっても、核兵器を使用した場合、日本はその国との交戦状態に入るであろう。そして、事前に劇的な外交環境の変化が無い限り、ロシアはその行動に同意しないであろう。そして、米国は必ずそれに報復攻撃を行うであろう。それは、核攻撃の報復であるか、そうでないかはそのときの状況によるが、中国が相手の場合、現在のところ、核戦力でも米国が圧倒的に有利であるから、核攻撃もありうる。勿論それは、中国都市部への攻撃を含む全面核攻撃ではなく、中国のICBM基地、その他軍事基地を目標にした攻撃である。そして、核攻撃を行わない場合でも、中国の核戦力を壊滅させるための攻撃が可能である。このほうが米国兵の損害は多いが、条約を結んでいる同盟国への核攻撃に対して報復を行わなければ、米軍の存在意義そのものが崩壊するので、必要であれば、通常兵器による報復もありえる。
 
このことはロシアを相手にした場合も同じである。米国が日本よりロシアを軍事的に優先することはありえない。なぜなら、ロシアは日本より脅威だからだ。ロシアの核戦力は米国にとってもかなりの脅威なので、全面的な核攻撃を行うのは、ロシアがその後も核攻撃を行う可能性があるかどうかによるだろう。しかし、核兵器は先制的に使用するほうが効果的なので、「この機会に唯一の核のライバルを消してしまおう」と考える可能性もありえる。この場合も、米国本土への直接の核攻撃の可能性がなければ、ICBM基地などを狙った攻撃になる可能性は大きい。当然、哨戒中の戦略原潜も目標になる。
 戦略原潜から発射されたポラリスミサイル
ちなみに、ロシアは勿論、中国も、全核戦力を投入すれば日本全土を焦土にするだけの核戦力を持つが、中国の場合は全てをそれに投入すると、今度は自国が攻撃された場合に反撃できなくなるので、それは難しいだろう。ロシアの場合はそれが可能だが、この場合、米国の報復攻撃は必ず核による全面攻撃になるので、こういう選択を行うとは考えられない。
 
ありうる核攻撃のパターンは、既に通常戦力による紛争が発生しており、それには米軍が参加していない、かつ日本を攻撃する側の方が損害が致命的に多い場合に、警告を行ったのち、紛争地域または自衛艦隊、もしくはその基地を標的にしての戦術核攻撃を行うパターンである。
例えば、尖閣諸島での小競り合いが現場指揮官の暴走で戦争になり、自衛隊が中国の虎の子機動部隊(空母含む)を壊滅させ、尖閣諸島に上陸している中国兵を包囲殲滅した場合、中国は尖閣諸島上の橋頭堡や周囲の自衛艦隊に戦術核ミサイルを使用する可能性がある。
これなら、米国の報復はどうしても限定的にならざるを得ない。
それでも、沿岸地域のICBM基地と戦略原潜は必ず目標になるだろう(通常戦力で攻撃可能)、そして、紛争に米軍が乗り出し、敵国は戦争目的を達成できないであろう。
そして、戦後、日本は攻撃的戦力(核兵器を含む)を拡充し、中国と同等の戦略的な軍事力を持つようになり、中国、もしくはロシアの東アジアでの軍事的なプレゼンスは相対的に低下すると考えられる。日本の核武装を米国が嫌がった場合でも、核戦力の協同管理などの形で日本の発言力は増すであろう。
このように考えると、中国もしくはロシアが日本が原因で国の存亡の危機に追い込まれない限り、核兵器を使った攻撃を行うとは考えれない。そしてそれをもし行った場合には、米国は同盟国へのプレゼンスという「自国の利益」のためにも、必ず何がしかの報復を行うであろう。
 
そして、北朝鮮であるが、現在のところ、確実性のある核攻撃は出来ない。それでもいちかばちかで使用し、たまたま命中した場合、米国は北朝鮮の軍事基地全てを攻撃し無力化できる。それに対して無制限の反撃を行えば、北朝鮮の瓦解は確実である。この場合は、通常戦力での攻撃でも兵員の損失は少ないので、通常戦力に少しの戦術核攻撃(弾道ミサイル基地への核攻撃)を行う程度で可能だ。そして、軍事力を失えば、北朝鮮政府は消滅するので、北朝鮮は米国・韓国・日本による占領統治下に入り、最終的に韓国に併合されるであろう。
北朝鮮のテポドンミサイル
このように、北朝鮮が核戦力をもっても蜂の一刺し程度の効果しかないので、まともな指揮官がこれを先制使用するとは考えにくい、しかも、現在から数年先の間に実戦使用に耐えうる信頼性の核弾道ミサイルを十分な数配備することは難しいので(少なくとも3箇所以上の基地に10基程度の弾頭装備のミサイルを常時配備して、それを爆撃から守る防空体制を整え、目標を監視する衛星などを持つ)、ミサイルが確実に目標に向かうか、迎撃に生き残るか、きちんと動作して、最初の核攻撃後も反撃のための核戦力が残るようにするのは無理だろう。そんな不安な攻撃手段を選ぶことは考えられない。この場合も、日本が北朝鮮に侵攻するなどの事態が無い限り使用しないと考えれる。
 
以上のことより、日米の安全保障体制において、米国が日本への核攻撃を自国への攻撃と同様に扱い報復を行うとの約束を取り付けている限り、ロシア・中国・北朝鮮は日本への核攻撃を行わないと考えられる。そして、もしそれを行うようなことがあれば、その国は日本と同様の損害をこうむり、その国家目標の達成には一切寄与しないと推定できる。
 
逆に、日本が核武装をもって米国から独立して自国の安全を守るためには、米国の協力と周辺各国との政治的な妥協、それと核戦力を十分に装備するためのコストが必要で、現在のところ、非現実的と言える。北朝鮮に対抗する程度の核戦力なら現在の軍事的な体制でも可能だが。中国やロシアに対しても十分対抗できる核戦力を維持するためには、現在の国防費の何倍もの費用と政治的な大きな犠牲、さらに、合衆国をも仮想敵として想定しなければならなくなる。
ここまでの犠牲とコストを払うことに大多数の国民が合意するとは考えにくいので、日本が核武装することは非現実的である。
 
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