ロシアにとってのウクライナ、クリミア半島軍事侵攻

現在、ウクライナ、クリミア半島の情勢が緊迫しています。

欧米各国、日本はロシアのクリミア半島への事実上の軍事侵攻に批判を寄せています。

しかしながら、そもそもの原因から考察すると、ウクライナの政変に欧米が不用意に干渉したことが、今回の軍事侵攻を引き起こしたと言えるでしょう。

かつて、バランス・オブ・パワーというゲームがありました。
冷戦時代の世界を世界大戦になるのを防ぎながら自陣営の勢力圏を広げていくという、実際の米ソの冷戦そのものを扱ったゲームでした。

このゲームを最高難度で挑戦するのは非常に大変で、通常のゲームスキルではクリア不可能とさえ言われていました。
これを、クリアするコツは、相手陣営(ソ連側)の勢力圏に手を出さないことでした。
チェコやハンガリーで動乱があっても反体制運動を援助するなどせず、自陣営を守ることに徹するのです。時に、相手が自陣営側にちょっかいを出した際に、それに厳しく報復することで自国の威信を高めるのです。

今回のウクライナの件は、かつての国際情勢分析で言えば簡単なケースだったはずです。
即ち、ウクライナに対しては暗黙にロシアの影響を認めるということです。
中国にとっての北朝鮮、アメリカ合衆国にとってのキューバと同じことです。
世界の大国にとって自国の勢力圏と思っている、センシティブな地域を自分側に引き入れたり、そこへ侵攻したりするのは非常に危険で、常に戦争の危険をはらんでいるのです。
一歩間違えば核戦争の可能性があります。

クリミア半島はかつてよりロシア南部、黒海周辺での要衝でした。
独ソ戦では独軍の南部方面の軍はここを攻略しなければ先へ進むのが困難だった。半島で守りやすく、黒海を経て海軍も行動可能で、陸にも海にもにらみを利かすことのできる地であった。
現在でも、黒海は地勢的な安定のために、ボスポラス海峡を空母は通過できないなどの国際的な取り決めがあり、緊張を起こさないように配慮しているはずだった。

クリミア半島の要塞をめぐる第二次大戦の独ソの戦い。世界最大の自走砲カールも投入
クリミア半島の要塞をめぐる第二次大戦の独ソの戦い。世界最大の自走砲カールも投入

ロシアと英国・トルコ同盟軍が戦ったクリミア戦争当時には、黒海にも英国の覇権が及び、黒海は長く小アジアの帝国、つまりトルコの支配下にあった。
しかし、ロシアは広大な領域をもって、一貫して勢力を伸ばし、この地域は常にロシアの南下の対象となってきた。
ソ連崩壊後も、この地域のロシアの影響力は変わらず、黒海・カスピ海周辺国家への、躊躇のない干渉などを見ると、イデオロギーに関わらず、ロシアが南方への勢力拡大に不変の欲求を持っているように考えられる。

近々の状況では、確かに、ウクライナの旧政権は人権問題などがありましたが、反体制側を支援して、政権を倒した後、同盟国(自陣営)にするなど、とんでもなく無謀です。
戦争の危険を冒してまで政変を支援する必要があったでしょうか?
欧米は、中東の王政国家やイスラエルに対するときと同じように慎重に行動すべきでした。

今回の、ウクライナの政変からクリミアへの侵攻までの経過を見ると、当初、ロシアは非常に控えめな行動をとっていた。オリンピックを挟んでいたこともあるでしょうが、ウクライナで旧政権が倒れてもしょうがないと思っていたのではないでしょうか。
旧政権ヤヌコーヴィチ大統領をウクライナに留め、ロシア軍の勢力下で保護すれば、いくら軍と警察が反旗を翻しても政権は倒れないだろうし、新政権側に影響を与える方策もいくらでもあったでしょう。
それなのに、欧米は、実際に総選挙も行っていない、暫定の政権を承認し、各種の経済援助やEU加盟を約束した。あからさまで、ロシアへの配慮は全くなかった。

そもそも、自陣営に引き入れる明確な態度を示さなくても政変は起こったであろうし、欧米にとって友好的な政権は樹立したであろうと思われます。
ウクライナでは民主的な変革の経験があり、かつ軍部の力は東西(NATOとロシア)の力関係から制限されていた。ロシア寄りの政権が長く続けば、次は欧米寄りの政権、次の選挙ではまた別の政権といったように、民主国家らしい政権交代が出来たであろうと思います。
大規模なデモや過激な勢力間で闘争があっても内乱になる危険性が少ない国だった。
まして、EUとNATOは、以前、ウクライナの加盟を検討した際に、ウクライナを自陣営に入れるのは時期尚早と判断したはず。

もし、欧米が本気でウクライナを勢力圏に引き込みたいなら、ロシアより先に軍事行動を起こすべきだった。そうしなければウクライナを保護することなど不可能だからだ。

  • 黒海に艦隊を派遣し
  • 空母を地中海に増派し、

    地中海域で活動している米海軍、第六艦隊。
    地中海域で活動している米海軍、第六艦隊。
  • ポーランド・ウクライナ国境で大規模な演習を行うべきだった。

    ポーランドはNATOの最前線である
    ポーランドはNATOの最前線である
  • バルト三国にNATO軍を増派すべきでした。

ここまでしなければ、今回のクリミアへの侵攻を食い止められなかったでしょう。

もし、この提案をすれば、鈍感な欧米首脳でも戦争の可能性に気付くでしょう。
しかしながら、今回欧米が行ったのは、軍事行動を伴わず、同程度の挑発を行ったことでした。

NATO・EUの東方への拡大、ロシアの孤立は核大国のロシアの力を形骸化するための理想ですが、世界を滅ぼす力を持つ国に対するにはよほど慎重でなければなりません。

既に欧米首脳は自分たちの対応の失敗を自覚しているでしょう。今後は、その失敗を忘れず、ロシアを追い詰めないよう、ほどほどの制裁に留め、ロシアが再び協調関係に戻れるような道を残しておくことです。
ウクライナの新政権も右派を排除し、ある程度ロシアの影響を認めるように方向修正が必要だし、それは欧米各国の意思によって可能です。

また、騒乱が長引くと過激派勢力が目をつけ侵入してくるので、欧米・ロシア共に、ウクライナ国内の騒乱状態を出来るだけ早く収め、治安を回復し、総選挙を行うことが必要です。これに関しては、新政権下であってもロシアは協力する方が利益になるし、ここで両者が譲歩できる場面も出てくるはず。

少なくとも、ヨーロッパだけでも平和であってほしいものです。

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