現代の偵察機

無人偵察機と広域早期警戒機の時代

航空自衛隊E-767
浜松基地へ帰投するE-767早期警戒機

近く日本も無人偵察機RQ-8グローバルホークを採用するらしい(2015年時点 計画中)。

航空偵察の世界は、軍事力の情報化に伴って大激変している。

無人偵察の発達によって、有人の航空偵察機は減ってきている。特に有人の戦術偵察機はほとんどなくなってきている。

 

■戦術偵察とは

RF-4
戦術偵察機RF-4ファントム

軍用機は初めに偵察機として使用された。第一次大戦のことで、塹壕戦での相手の兵士、火砲、補給線などの位置を確かめて作戦に用いるためだった。軍用機の初めから使われたこの偵察が戦術偵察である。現時点での敵軍の配置や行動を探り、作戦に役立てる偵察である。第二次大戦時に大規模な航空爆撃が可能になると、爆撃目標の選定や爆撃後の効果判定にも偵察機が使用されるようになり、このような偵察も戦術偵察の範疇である。

 

■戦略偵察とは

U-2
ロッキードU-2偵察機

第二次大戦後、冷戦期に入ると、核兵器と弾道ミサイルが登場し、敵国の国力そのものが攻撃対象となると、兵力の具体的な配備以外に、産業資産、交通網、指揮通信網、発電所、石油精製施設を調べることが必要になった。また、相手国の核兵器関連施設、弾道ミサイル基地なども偵察する必要があった。これらは相手国の奥深くにあり、当然、相手領土内にある。実際には戦争状態にない米ソ両国は、相手国を偵察するために高高度を高速で飛行する偵察機を開発した。U-2やSR-71、Mig-25などだ
MIG25
ソ連は高速のMIG-25を偵察機に使用した

これらを戦略偵察機と呼び、主に核攻撃目標に関する偵察を行うものを戦略偵察と分類した。

 

■SR-71から偵察衛星へ

戦略偵察はその後、人工衛星によって行われるようになり、戦略偵察機は次第に使われなくなった。

kh12model020
キーホール偵察衛星

これは、U-2の撃墜などに見られるように、対空ミサイルの発達により敵国領内をどんなに高く速く飛んでも撃墜される可能性が高くなってきたことが直接のきっかけだ。航空機による戦略偵察は米国が主に行っていた。ロッキードのケリー・ジョンソン率いるスカンクワークはこのための専用機を開発し、その最終形態がSR-71ブラックバードであった。ケリー・ジョンソンはこの機体は決して撃墜されないと豪語し、事実、ソ連領内など敵性国の領土内を何度も飛行しながら1機も撃墜されていない。
Lockheed_SR-71_Blackbird
ロッキードSR-71世界最速の戦略偵察機

高度25000m以上を速度3000km/h以上で飛行するので、速度M4、射程30km程度のSA-2ガイドライン対空ミサイルなら物理的な撃墜可能時間が1分程度しかなく、進路をあらかじめ予測して発射しないと接近することすらできない。おそらく、パトリオットやS-300のような弾道弾迎撃性能をもつミサイルでなければ迎撃不能であった。

弾幕のようにミサイルを発射しておけば撃墜可能だが、平時にこの方法を用いることは難しい。また、偵察機は半径50km以上を偵察可能で、領空の端をかするように飛ぶため、実際に領空内に入っているのは数分間だけだ。この短い時間に、米国の航空機を攻撃する政治判断して命令し、ミサイルを発射するのは難しかった。

このように、SR-71は戦略偵察機として十分な性能を誇っていたが、宇宙飛行にも似たミッションの困難さや通常の航空機と全く異なるメンテナンスが必要なことがマイナス要因となり、偵察衛星に搭載するセンサーの発達によって、次第に偵察衛星に取って代わられることになった。

しかし、米国は、この戦略偵察機を完全に偵察衛星に置き換えることは出来なかった。偵察衛星は低高度の太陽同期軌道を取り、地球上の全地点を通過するようになっているが、その周期は一定で、次に衛星が上空に来る時間は予測可能だ。もし移動式の弾道ミサイルならその時間だけ隠しておけば移動を感知されない。また、常時地上を監視するには何機もの衛星を飛ばしておくことが必要で、米国でも高精度の情報を常時得ることは出来なかった。
すなわち、非常時に思いがけもしない場所を調べる必要が生じたときのためにSR-71やU-2が必要だったのだ。

 

■無人偵察機の登場

実際にU-2やSR-71の運用にとどめを刺したのは偵察衛星でなく、無人偵察機だった。

RQ-4GlobalHawk
RQ-4 GlobalHawk グローバルホーク

偵察用のセンサー、特に赤外線カメラと合成開口レーダーの発達によって、昼夜、天候を問わず上空から地上を監視できるようになったことは偵察衛星の性能を高めた。衛星高度から小さな車まで識別できるようになった。これだけの性能を持つと、逆に、目標の行動を監視することを求めるようになり、移動や時間的な変化を監視するのに偵察衛星の時間的な制約が大きなネックとなった。

一方、U-2やSR-71の設計に使われたステルス技術の発達によって、航空機がレーダーに感知されにくくなると。周期的に衛星軌道をまわる衛星より航空機の方が相手に察知されにくく有利になってきた。

さらに、デジタル通信技術と飛行を制御するコンピュータ技術の発達で、無人航空機に偵察センサーを搭載し、常時目標上空を飛行して監視できるようになった。

つまり、無人偵察機は、偵察機の可用性と衛星の安定性を持っているのだ。当面、全地球的に監視するには、燃料無用で飛べる衛星が用いられるだろうが、無人偵察機は今後も利用は広がるだろう。

 

■戦術偵察機の終焉

無人偵察機では人的な損害はなく、飛行時間も長い、デジタル衛星通信により地球の反対側にいてもその情報を受け取れる。

無人偵察機は高高度を飛行し、広範囲を偵察するグローバルホークのようなタイプと、低高度を短時間飛行し、主に小さな目標の現在時の行動を偵察するMQ-1プレデターのようなタイプがある。かつての戦略偵察機と戦術偵察機のような関係だ。

MQ-1Predator
MQ-1プレデター 主に低空でTVカメラで偵察

各種の無人偵察機によって、敵国のはるか後方の核兵器開発施設から、建物裏の隠れた兵士まで偵察できるようになったために、元来、危険な低高度を敵に接近して飛行しなければならない戦術偵察機の需要は少なくなってきている。

さらに、センサー類の発達・小型化で、通常の航空機にポットタイプの偵察装備を付けるだけで偵察可能になったので、専用の有人偵察機や専用の飛行隊の必要性は減っている。ミリ波レーダーなどによってヘリコプターから瞬時に広域を偵察できるようになったことも、戦術偵察機の活躍の場を少なくしている。

しかし、無人偵察機の運用には特別の指令センターや情報解析システムが必要で、情報通信衛星網と安定したGPS衛星網が必須である。これらは軍用でなくても有用なので、全体の初期コストは莫大であるが整備されている。これは米国に独占されているので、米国以外の国は独立した偵察能力の為には今後も有人の偵察機を運用しなければならない。

 

■広域早期警戒機

湾岸戦争は正規軍同士が地上戦を行った最後の戦争だ。この戦争はまだ、冷戦時代の戦術が残り、米軍や同盟軍も情報化の度合いは小さかった。例えば、誘導爆弾の使用率は、

投下兵器数・量 誘導爆弾の使用割合
ベトナム戦争 200万トン以上(400万発) 1%未満
湾岸戦争 22万7648発 7.7%
コソボ戦争 2万3644発 29.8%
アフガン戦争 1万7459発 60.4%

※Northrop Grumman Future War

湾岸戦争では7%程度しかない、アフガン戦争では60%に達している。軍隊の情報化はこの投下誘導爆弾の使用率と同様に進化していると見ていい。誘導するためにはGPS用の座標ポイントもしくはレーザーによる目標指示が必要で、それは戦場の偵察情報によって得られるからだ。情報量が多いほど誘導爆弾の使用機会が増え、その効果は上がる。

話を戻して、情報化度合いの小さかった湾岸戦争で、実験中にもかかわらず急遽呼び出され、勝利に大きく貢献した航空機がE-8 Joint Stars(ジョイントスターズ)だ。

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E-8ジョイントスターズ 地上を広域で監視する
中古のボーイング707の胴体下部に対地監視用側方レーダーAN/APY-3を搭載している。このレーダーはドップラー・モードで使用するとイラク・サウジアラビア国境全域の地上の移動目標をできる。これによって、イラク軍が国道沿いに移動する様子が丸見えになり、道路に立ち往生するうち、次々と破壊され、道路にはイラク軍車両の残骸がえんえんと続くことになった。
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クウェート国内から撤退するイラク軍をレーダーがとらえた様子

このような機体がある場合、地上での大規模な作戦移動は意味をなさない。アンフェアと言って良いほどだ。湾岸戦争地上作戦での作戦立案をほめる人がいるが、わが方は全く偵察されず、相手方のみ動きが丸見えなのだから、誰であっても可能な作戦であった。逆に、

遭遇戦で敵の先制攻撃を受けたり、カフジ油田への奇襲を未然に察知できなかったり、用心深さに欠ける用兵だった。

それでも米軍と同盟軍が圧勝したのは、軍隊の情報化が決定的な能力差になることの実証であり、米軍が進めてきた情報革命戦略が正しかったことを証明している。

この時に実験的に使用されたE-8はその後正式採用され、改良も続き、現在では、車両の区別ができるようになり、地上偵察の重要な一員になっている。

現代では、合成開口レーダーの実用化、高性能化によって、広大な戦場全体を1機で監視できるようになり、このような機体は各国で実用化されている。E-8のような大きな機体だけでなく、スウェーデンのエリアイFSR-890のような小型の機体にも搭載可能。

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レイセオン社のSLARを搭載したサーブ機

海上哨戒機は以前から側方監視レーダーSLARを搭載していたが、海上のようなまっ平らな上の目標のみ探知可能であった。波のある荒れた海面では性能も限られていたが、レーダーと情報処理能力の向上で、今は波の高い海で潜水艦の潜望鏡を探知することも可能になっている。

海上哨戒機のSLARと地上監視用のそれは同じもので、最新の海上哨戒機は地上も監視可能である。しかし、E-8があえてJoint-Starsと統合を謳ったように、軍隊はいまだ陸軍、海軍、空軍の垣根が高く、運用・技術開発面で統合が難しく、海軍の哨戒機と、その他地上監視機を全部一緒にすることはなさそうだ。

E-8や空域を監視する早期警戒機E-3、E-767などと、リベットジョイントなどの通信監視機や海上哨戒機などを駆使することで、今や戦場は常時監視できるようになっているのだ。


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海上自衛隊P-3C


RC-135

RC-135リベットジョイント各種通信を傍受するSIGINT偵察機

さらに詳細な敵勢力地域偵察を行う無人機を導入すれば、戦場に隠れる場所はなくなるだろう。

離れてももはや隠れられない状況から、今後、ステルス性はより重要になってくる。E-8やE-3は戦争を決定づける重要目標なので、ステルス戦闘機F-22やF-35の最初の目標はこれら戦場監視機である。

 

■RQ-4 グローバルホーク

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グローバルホークの透視図

前にある大きなコクピットのようなふくらみ内には衛星との通信用アンテナがあり、偵察センサー類はすべて胴体下部に内蔵されている。

高度なセンサーや燃料を大量に搭載するために相当に大型である。

乗員が不要なので機体上面が空力的に滑らかで、エンジンの空気取り入れ口も機体上部にある。これはステルス性にも有利である。

高アスペクト比の、長い主翼を持ち、全体形はU-2を連想させる。飛行形態は似ているので、当然と言えば当然。

製造はノースロップ・グラマン社による。しかし、センサー類をはじめ、現代の兵器らしく、レイセオンなど主要軍事メーカー統合事業化している。

グローバルホークは1万メートルを超える高高度を飛行し、広域を監視するための偵察機である。自衛隊が運用するのも、北朝鮮や中国・ロシア敵国領域を監視するためと考えられる。高高度であれば、敵領海へ侵入しなくても偵察が可能。

搭載するセンサー類も合成開口レーダーを主にしている。合成開口レーダーは移動しながらレーダー波を照射することで、時間軸で情報を統合し、理論的に広大なレーダーと同じ能力を持つ。レーダーの解像度は最高度の軍事機密であるが、おそらく、1m程度の解像度を有し、自動車などを区別できると思われる。

他には赤外線カメラなどのセンサーも搭載し、弾道ミサイルの発射や核関連施設も監視する能力を持っていると思われる。

米海軍が採用している機体もあり、海上哨戒にも使用可能。当然ドップラーレーダー的な移動目標を監視する能力も有していると思われる。

近年はSIGINT、電子偵察任務にも使用され。レーダー波や通信波の傍受も行っている。

エンジンはロールスロイス製QE3007ターボファンエンジン。ペイロードは約900kg。最大離陸重量は12t。

全幅は35mもあり、戦闘機F-15の2倍もある。

GlobalHawk
RQ-4整備中の人と比べるとその大きさがわかる
この長い主翼のおかげで航続距離は1万海里を超える。低速で巡航するので、同一地域を12時間程度監視できるのではないかと思われる。今後、無人機に空中給油能力などが付与されれば、本当に24時間自動的に滞空して、常時世界を監視できるようになるだろう。

 

■RQ-1プレデター/MQ-9リーパー

MQ-1_Predator
プレデターはミサイルを搭載し攻撃もできる偵察機

グローバルホークより小型の偵察機で、戦術偵察用の機体といえる(前述したように、実際にはそのような区分はなくなった)。グローバルホークと似たような形態だが、全幅14.8m、全長8.2mとずっと小さい。

より低高度(上昇限度は7620m)で運用されるので、センサーも光学センサーが多く、赤外線TVカメラがその代表。リアルタイムで戦場の状況を伝えることが出来るので、作戦上極めて有意である。

また、訓練されていない分析官でない、部隊長や政治家でもカメラ映像は見てすぐに理解できるので、まさにリアルタイムに政治的な決断を伴った作戦が可能であり、このことから、偵察、監視、攻撃、評価とプレデターが多用途化していくことになり、それは制式名にも反映し、MQ-9と多用途を示す「M」がつき、カメラからミサイルまで装備する無人機となった。人間を殺すことが出来る、初めての自律行動可能な無人機だ。映画ターミネーターの世界はすでに到来しているのだ。

イラクでは、スティンガーを搭載したプレデターがMIG-25と交戦し撃墜された。近い将来、無人戦闘機同士の空中戦も行われるようになり、それはあらかじめプログラムした交戦アルゴリズムを使用することになるだろう。今のように、ミサイル発射に人間を介在させると反応が遅れ、完全自律で動作する相手機に負けてしまうからだ。そして、索敵、識別、攻撃までを自動的に実行する無人兵器と発展していくのだ。

プレデターに代表されるような無人機の攻撃は、対テロ戦争で唯一効果のある作戦と言って良い。これと、全世界の通信網を自律的に傍受・解析するシステムがタリバーンとアルカイダの行動を大きく制限しているのだ。

 

■無人機のコスト

無人機の費用は決して安くはない。RQ-4グローバルホークは機体のみで1機25億円、プレデターは1機5億円程度で、F-15の50~100億円、F-22の200億円などと比べると機体そのものは安い。有人機はパイロットを訓練するのに時間と費用がかかるが、一方で、無人機のパイロットや分析官にも専門の訓練が必要である。しかも、無人機の運用にはGPSシステムや衛星通信システムも必要で、運用センターも専用のものが必要だ。今のところ全体的な運用経費はどっこいどっこい。

決定的なのは、人的な損害が全くでないことだ。これにより、政治家は道義的なリスクを排除して戦争を行うことが可能になり、敵国にはより非人間的な戦争になる。今日の大衆民主主義での右傾的な傾向は、戦争が非現実化して、そのリスクを考えることがなくなってきたことが一つの要因。バクダッドががれきと化しても、兵士の損害が100人にも満たないのであれば、一般の米国人は戦争のリスクなど考えずに「戦争しろ」と叫ぶだろう。ベトナム戦争当時のように、誰もがその戦場に行かねばならず、身近な人が死ぬ危険があった時と同じように戦争を考えるはずがない。かつて、自らが死ぬ可能性があったにもかかわらず「戦争だ」と言った人々が、今は犠牲無しで戦争できるのだから。

テロによって自国民死んだり、敵国を占領したりするため、兵士を派遣する必要がなければ、米国人は、少し安いガソリンを確保するためにずっと戦争をしつづけることを許容するであろう。それを「平和、安全」と感じるだろう。まさに安全の為の戦争で、平和のための戦争だ。この、政治家の嘘の代表のような言葉が、実現可能になってしまった。

 

■最後に

考察の最後に、無人機から攻撃を受ける側の立場に立ってみよう。「自分たちの本当の痛みを分からせるために米国の市民を目標にテロを行う」が分かるのではないだろうか。音も姿も見えない無人機から攻撃を受けたとき、復讐はどこへ向かうだろうか。そこに戦う敵兵士がなければ、米国の市民を目標に選ぶことは、彼らにとって普通のことになるだろう。

非対称戦は、攻撃においてのみでなく、反撃の形も非対称にならざる得ないのだ。逆に考えれば、相手国民を戦争目標にしないなら、それは軍隊による戦争でなく、警察力とテロ組織との戦いなのだ。

実際には面倒でややこしい、複雑な行政統治の問題なのに、「敵国」を作り上げることで強大すぎる軍事力を投入してしまう米国の愚かさよ。これはもはや軍隊の仕事ではないのに。

戦争をコンピュータ任せにした時にどんな危険が訪れるか、たくさんのSF小説が予言している。戦争での殺戮に、何の犠牲を払わずに済むはずがない。

 

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戦車TOP10 4位 ソビエトT-55


旧ソビエト軍T-55。

T-55
T-55
性能諸元
全長 9.2m
車体長 6.45m
全幅 3.27m
全高 2.35 m
重量 36 t
懸架方式 トーションバー方式
速度 50km/h(整地) 35 km/h(不整地)
行動距離 約460km
主砲 56口径100 mmライフル砲 D-10T2S
副武装 12.7 mm機関銃 DShKM
7.62mm機関銃 SGMT
装甲 防盾 210 mm
砲塔側面 110 mm
後面 60 mm
砲塔上面 30 mm
車体前面上・下部 100 mm
車体側面上部 80 mm
車体側面下部 20 mm
車体上面 33 mm

底面 20 mm
エンジン V2-55 12気筒液冷ディーゼル
580 馬力
乗員 4名

 

戦車大国ソビエトの最多の生産数、すなわち歴史上もっとも多く造られた戦車である。

第二次大戦後の冷戦期を特徴づける戦車で、冷戦期の戦車開発競争の基準となった戦車である。1つのタイプの戦車で、これほど実戦で活躍した戦車は他にない。第二次大戦後直後に開発されて以来(制式化1954年)、現在も使用されている。

 

戦車の生産数
T-55 ソビエト 100,000両
T-34 ソビエト 64,000両(T-34/85含む)
M-4 アメリカ合衆国 50,000両
T-72 ソビエト 25,000両
T-62 ソビエト 20,000両
M-60パットン アメリカ合衆国 15,000両
M-48パットン アメリカ合衆国 12,000両
T-26 ソビエト 11,000両
M-1 エイブラムス アメリカ合衆国 10,000両

 

こうして見ると、ソ連がいかに多量の戦車を生産していたか分かる。ヨーロッパと陸続きであることを最大限利用するなら、機甲戦が必須であることを痛感していたのであろう。

戦中のT-34の生産では、戦時下で一時的に国土の主要部を独軍に占領されていたわりに多数の戦車を生産できたことは特筆に値する。途中で85mm砲に換装しても生産数が落ちなかった。巨大な経済力を持ったアメリカ合衆国でさえM4を5万両しか生産できなかったことを考えると、この生産数は驚異だ。

しかし、それを倍ほども上回るT-55シリーズの生産量は空前絶後、前人未到の数と言ってよい。

これが出来たのは、ソ連が機甲戦力によるヨーロッパ侵攻を戦略の基本にしていたこと、東ヨーロッパの支配によってソ連の経済力が高まったこと、戦車をMBT(T-55)に集約したこと、が相まってなしえたことだ。

T-34から続く生産性の高い設計や信頼性の高いエンジン、クリスティー式懸架装置にかえてトーションバー方式にしたことはT-55の生産性を高めた。

また、最大の敵対国のアメリカ合衆国がM4シャーマン戦車以降、十分な性能の主力戦車を設計できず、常にソ連戦車の後追いになっていたことも理由の一つだろう。ソ連及び共産主義勢力は1970年代までT-55を第一線の戦車として生産・配備できたのだ。

T-55は東ヨーロッパ各国でライセンス生産もされ、中国ではコピー戦車として59式戦車が生産された。これもかなりの数が生産された。

 

 

歴史

T-55はT-34から発達した戦車と言える。T-34の後継車でとT-55の直接の祖であるT-44はT-34の砲塔とT-55の車体を合わせたような姿をしている。


T-34

T-34


T-44

T-34の砲塔とT-55の車体を合わせたようなT-44

しかし、その画期的な点は、ソ連がドイツの重戦車と戦う中で開発した一連の重戦車群、KV-1,KV-2,ISシリーズと続く戦車を統合する形でT-55を生み出したことだ。

重戦車 IS-2
重戦車 IS-2

T-55以前は、重装甲で重い戦車を倒すには重戦車が必要と考えられてきた。特に、ドイツのタイガー重戦車と対したソ連にとって、重戦車は切実に必要な戦車と思われてきた。

しかし、ソ連が大戦後のヨーロッパでの戦争を考察した時に、重戦車が活躍する場面は小さいと思われた。IS-3やのちのT-10のような完成された重戦車を手に入れてもなお、ソ連の戦車開発首脳部はそれを断念した。

米軍の圧倒的な軍事力を前に、ヨーロッパでの戦争に勝ち抜くには、機甲戦力による電撃的な侵攻が必要であり、重戦車のように機動力を犠牲にして成り立つような機甲戦力は無いと結論付けた。

これは今日のMTBの考え方であり、その始祖と言ってよい。事実、T-55の登場によって西側各国の重戦車は滅びたと言ってよい。戦車用に完成されたD-10Tシリーズ100mmライフル砲は西側標準であった90mm戦車砲の破壊力を凌駕し、各種大口径砲よりも扱いやすく、重戦車を前にしても撃破する性能を持っていた(HEAT弾)。

そもそも相手戦車を撃破する能力なくして戦車としては成り立たないという考えが、攻撃力が低くて機動性が高いという中戦車の概念を覆した。どんな戦車も、相手戦車を破壊できる性能が必要と考えれば、重戦車すら撃破可能な戦車砲を搭載するしかなく、そのような戦車があれば重戦車の必要性はなくなる。

この合理的な、いかにもスラブ的、マルクス主義的な思考が、主力戦車T-55を生み出したのだ。

これに対抗して西側諸国はロイヤルオードナンス製L7 105mmを装備した戦車を開発し、第二世代の戦車として配備する。戦車史上、戦後第二世代の戦車はT-55に対抗して生み出された105mm砲装備の一連の戦車群と言えるだろう。

 

戦歴

T-55の実戦数は限りがない。

ソ連による東ヨーロッパへの介入の際にも使用され、ソ連陸軍の象徴的な存在であった。

ハンガリー動乱でのT-55
ハンガリー動乱でのT-55

中東戦争

数次の中東戦争では本格的な戦車戦にも投入され、イスラエル側のセンチュリオンやシャーマン、パットン戦車

と幾多の戦闘を行った。

第三次中東戦争 ゴラン高原でのT-55
第三次中東戦争 ゴラン高原でのT-55

T-55はソ連が支援していたアラブ側、シリア、エジプト、イラク軍などが使用し、戦闘で多数の鹵獲車両を手に入れたイスラエル側も修理・改良の上使用した。

中東戦争での戦車戦は、事実上、第二次大戦後、最も激しい戦車戦で、戦車同士が大規模に交戦した。

中東戦争では大規模な機甲化された陸軍が国境そばに配備され、数時間の侵攻で相手の枢要部に進出できるため、機甲戦力は極めて重要だった。双方とも機甲戦力を決戦戦力と考えていて、戦車戦力を強化していた。しかも、シリア国境は死海やヨルダン川、エジプト国境はスエズ運河などの自然要害のために戦力が集中し、接近した激しい戦車戦になった。

第4次中東戦争のゴラン高原では1400両以上のシリア軍戦車が投入され突破を図ったが、イスラエル軍のセンチュリオン戦車など180両の奮戦で食い止めた、同シナイ半島は初期のエジプト軍の攻勢でイスラエル軍は3日間で400両以上の戦車を失い、前線は突破された。

初期の3度の中東戦争ではアラブ側はT-55を主力とし、対してイスラエルは混成軍で、最も強力だったのはセンチュリオン戦車だった。

この戦争では、イスラエル側の練度の高さも相まって、ほぼイスラエル側の勝利と言って良い。しかし、戦車の能力では、旧時代のシャーマン戦車などでは、いくら改良してもT-55に及ばず、AMX-13などの軽戦車も戦場では役に立たないことが分かった。逆にT-55に対抗して105mm砲を装備したセンチュリオンやM60はT-55を凌駕し、T-62にも十分に対抗できることが分かった。

この戦闘によって、対戦車ミサイルなどの脅威に対する防御力が必須であると認識され、後の複合装甲化された第三世代戦車群へつながる。ここでもT-55の存在は、戦車の弱点改良のキーポイントになっている。

 

中東戦争後も、多量の生産数を誇るT-55は各地で使用された。

ベトナム戦争後の中越戦争では、ベトナム側がT-55を使用し、中国側が改良型の59式戦車を使用した。

 

湾岸戦争は、数の上では第二次大戦以後最大の戦車戦となったが、夜間戦闘力と情報戦に勝る米英両軍がイラク軍を圧倒し、T-55はおろかT-72でさえ一方的に撃破された。

第三世代MBTの防御力と情報戦能力が実証され、もはや旧世代の戦車では戦車戦は戦えないことが明白になった。

 

ソビエトと東欧各国がT-72系列へと移行したのちは、余剰のT-55が世界に流出したために、逆に、戦車同士の戦闘が発生しないような紛争では多用されるようになった。

情報戦能力など持たず、簡素で、市場に多量の予備品が出回っているT-55の方が運用しやすく、内戦や小規模な紛争では、相手も高度な対戦車兵器を持たないために有効な機甲戦力として活躍している。このことは、戦車を倒すためには高度な兵器とそれを十分に運用できる訓練が必要で、それは組織化されていない武装集団には難しいということを示している。

 

特徴・構成

第二次大戦後の戦車開発史を決定づけるような戦車でありながら、全く人気の無い戦車で、形も不恰好、箱にお椀を乗せただけの積み木のような戦車であるからしょうがない。

しかも、冷戦後の紛争で登場するたび片っ端からやられ、弱戦車の代表格になってしまった。

でも、この戦車が核戦争下で運用することを前提に設計されたことを忘れてはいけない。放射能にまみれた戦場でお椀型砲塔の背の低い戦車がたくさん現れるところを想像してみると、案外お似合いだ。

T-55はT-34から重戦車の系列の要素を加えつつ発展し、主砲に100mm砲という、当時もっとも強力な戦車砲を搭載したことでその地位を確立した。主砲自体の威力は第二世代戦車を破壊するのに十分であった。

 

後に防御力に弱点があることが実証されたが、HEAT弾の貫徹力を前に、設計段階で防御を犠牲にした戦車大半だった第二世代戦車の中で見ると、特別に防御力が弱かったとは言えない。中東戦争では、防御力の特に優秀な米英の戦車を相手にしており、公平な比較ではない。センチュリオンやパットンが105mm砲を装備したのはT-55に対抗するためだった。

 

サスペンションにはトーションバーを用い、より低平な戦車になっている。大規模な機甲侵攻作戦には機動力が不可欠なために、不整地走行能力と潜水渡河能力が必要で、それを備えている。アフガンなどで運用されていることから、不整地の走行能力に問題はないと思われる。

 

エンジンもT-34から発展したV2-55 12気筒液冷ディーゼルで高い信頼性を誇る。

後に述べる車内容積の狭さから、燃料搭載量が少なく、航続距離が短い。ソ連からの機甲戦力による侵攻を考えるなら、あと200km程度の航続は必要で、後部外側に取り付けるドラム缶によって対応している。

旧東ドイツの国境からドイツの主要都市は100km~200kmの圏内にあった。東ドイツ北部のシュウェーリンから西ドイツのハンブルクなら110km程度。不整地を戦闘走行するために燃料は2.5倍程度消費する。加えて核攻撃が予測されるために前線攻撃発起点から後方へ50km程度は退避しておく必要があるから。

110×2.5+50=325km ハンブルクなら予備燃料なしで到達。

西ベルリンの部隊を攻撃後、ハンブルク方面に向かうなら280km程度なので、

280×2.5+50=750km 予備燃料があってもギリギリか。

ドイツ ベルリンからハンブルクへの距離は300キロ弱
ドイツ ベルリンからハンブルクへの距離は300キロ弱

車内容積の狭さは問題だ、防御力の弱さも、一因はこれにあり、弾薬配置などに支障があり、装填作業にも影響がある。

お椀型の鋳造砲塔を載せると、弾薬はほとんど砲塔下に置かねばならず、装填作業は困難だ。また、車体中央に開け放たれた状態で砲弾が集中しているので、被弾時に誘爆を起こし、常に致命的な被害を受けている。

T-62以後、ソ連は自動装てん装置の開発に力を入れるのも、この時の苦い経験が影響していると思われる。

自分たちの得意な鋳造装甲のお椀型砲塔を取り入れ、かつ優秀な性能を維持するにはその欠点改良が必要だった。

T-90になっても基本的な形状を変えないところを見ると、この問題は解決されつつあるようだ。

 

この世代の戦車なので、夜間戦闘能力やベトロニクス(死語?)にはあまり触れない。赤外線灯光装置によって500m程度での夜間戦闘能力があったが、ゴラン高原での戦闘ではそれが発揮できていない。FCSが貧弱で、測距などできないレベルなので遠戦能力は低い。

 

 

T-55 vs M-48パットン

同時代の好敵手といえばM48パットンだろう。

M48パットン
M48パットン
T-55 M-48
重量 36t 52t
速度 50km/h 48km/h
航続距離 460km 463km
主砲 56口径 100mm D-10T2 43口径 90mm M41
装甲(車体正面) 100mm 120mm

 

M60以降の105mm砲装備型はかなり後半になり生産時期で言えば、A3型までを比較するのが相当であろう。

エンジンは双方ディーゼルエンジンで、航続距離などに差はない。

違いを見れば、重量と火力である。

ここから一見して、T-55が火力で優れ、M-48が防御力や居住性で優れていると分かる。

しかし、M-48の防御力はT-55に抗するのに十分な防御力であろうか?否である。防御は火力とのバランスで成り立つ。相手が貫徹力180mmを誇る100mm砲の場合、M-48の防御力は十分でない。仮に1対1

で向き合った場合、双方とも貫通されるからだ。

後年、パントン戦車は105mm砲を搭載し、T-55の火力を凌駕するが、T-55は100mm以上の戦車砲を搭載することは叶わなかった。唯一、イスラエル軍が105mm
L7戦車砲を搭載したが、ソ連ではすぐに、滑腔砲を搭載したT-62へと移行していく。

 

西側戦車は、T-55の登場を契機に主砲の105mm化を進めるが、その時期(1970年代)まではT-55の火力に劣る90mm砲や20ポンド砲を主装備にしていた。つまりT-55は当時最強の火力を持った戦車であった。

西側戦車はL7 105mm砲によって105mm化するが、もし、このコンパクトで強力なL7砲の開発が遅れていたなら、もっと長くソ連戦車の優勢は続いていただろう。

(センチュリオン TOP10、8位の優秀さはその主砲の優秀さゆえ)

 

発展

T-54/T-55はソ連において大きな改良はなかったが、多数が生産され、今も運用されていることから、ソ連で第一線から退いた後に改良が行われた。

改良点は弱点の防御力とFCSで追加装甲とレーザー測遠器の装備が多い。

イラク軍のT-55エニグマ
イラク軍のT-55エニグマ

中東戦争で多数を鹵獲し、その後自軍装備に加えたイスラエル軍はL7 105mm砲装備のチランや、

イスラエル軍 T-55の改良型Tiran戦車
イスラエル軍 T-55の改良型Tiran戦車

砲塔を取り除き、重装甲の歩兵戦闘車として改良したアチザリットは別格の改造型

イスラエル軍アチザリット戦闘兵車
イスラエル軍アチザリット戦闘兵車

この装甲車は、戦車としては防御の貧弱なT-55でも、他の装甲車に比べると強力な装甲を持っていることを改めて示している。戦車の装甲防御は、戦場では無類の強さを発揮するのだ。

 

まとめ

同時代戦車と比較しての火力の優秀さ、完成された機動装置、一程度の走行防御、生産性、実戦での活躍、そして何よりも、中戦車・重戦車といった区分をなくし、一つの主力戦車で火力・防御力・機動力のバランスのとれた戦車が可能であることを実証した戦車として、歴史に残る名戦車と言える。

 

 

戦車TOP10 第2位 パンター戦車

第二次大戦のドイツ戦車パンターです。

Panzerkampfwagen V Panther 制式番号:Sd.Kfz.171

パンター戦車
パンター戦車
パンターG型後期型
性能諸元
全長 8.66 m
車体長 6.87 m
全幅 3.27 m
全高 2.85 m
重量 44.8 t
懸架方式 ダブルトーションバー方式
速度 46 – 55 km/h(整地) 27 – 33 km/h(不整地
行動距離 170 – 250 km
主砲 70口径75 mm Kw.K.42 L/70(79発)
副武装 7.92 mm MG34機関銃×2(4,200発)
装甲 砲塔前面110 mm 傾斜11° 側・後面45mm 傾斜25° 車体前面80mm 傾斜55° 側面40mm 傾斜40° 後面40mm 傾斜30°
エンジン Maybach HL230P30 水冷4ストロークV型12気筒ガソリン 700 hp (520 kW)
乗員 5 名

 

タイガー戦車と並んで有名なドイツの最優秀戦車。

Ⅰ号戦車から続く第二次大戦中に開発されたドイツの主力中戦車。

Ⅴ号戦車(Panzerkampfwagen V)と呼ぶが実際はⅥ号戦車のタイガー戦車よりあとに制式化されている。

 

戦車は第一次大戦で生まれ、第二次大戦で大きく発展した。塹壕戦という形態を一気に陳腐化させ、装甲化した機械化部隊による機動戦略が作戦の基本となった。まさに陸戦の王者になったと言ってよいだろう。

この機甲戦略を最初に実戦に用いたドイツで、その提唱者だったハインツ・グデーリアンは必要な戦車の性能を思い描いていたが、それを初めて具現化したドイツ戦車がパンターだ。

 

パンターはソ連のT-34を研究した結果を設計に反映させている為、傾斜装甲や東部前線の不整地を走行できる機動性を備えている。

開発にはMAN社とダイムラー・ベンツ社が競争設計に参加し、ベンツ社の設計はT-34に形状が似ている。

パンターの試作案
ベンツ社の設計はT34に酷似している

このことからT-34がいかに大きな影響を与えたか分かる。戦車史へ与えた影響を評価するならT-34がトップになることは間違いない。しかし、ここでの順位は影響でなく、実戦での性能を評価するのでT-34はパンターに劣る。これは、単に後から開発されたからパンターが優秀という以上に、革新的な技術力を導入し、利用できる資材、戦略を考慮して、最も戦場に必要な性能を備えた戦車を送り込めたということが重要なのだ。

 

 

T-34とどちらが優秀か

T34/85
T34/85

では、T-34よりパンターは優れているだろうか?

勿論である。しかしながら、これほど無意味な考察はない。両者とも当時与えられた任務に最適で他を寄せ付けない性能を発揮して戦いに貢献したからだ。

それでも、無理やりにでも優劣をつけようとするなら、、

 

T-34は当然85mm砲装備型を相手に検討する。

パンターとT-34が合いまみえた場合を考えればすぐに結論は出る。T-34ではパンターは倒せないであろう。装甲も火力もパンターが勝り、より遠距離で有効な攻撃を加えることが出来る。重量はパンターの方が重いが、それに十分な機動力を与える機関を有し、優秀なトーションバー・サスペンションによって不整地でもT-34に勝る機動性を誇る。

 

世間にある大きな誤解の中に、ドイツ戦車は火力装甲に優れるが鈍重というのがあるが、あれだけの重量を駆動できるエンジンとトランスミッションを開発できたのがドイツだけであったとこを忘れてはならない。資源が乏しく生産力に劣るドイツが、米国やソ連の戦車と対するのに、相手が持っていない技術を使わないということがありえるだろうか?兵器は常に戦う相手を考えて設計される。それなら、相手にない能力を加えより有利に戦闘できるようにするのが当然だ。

たとえ最高速で劣っても、レースで戦う訳ではないのでそれは関係ない。逆に不整地でスタックせず機動的な作戦を実行できるかがカギになる。パンターはその能力を備えていると言えるだろう。

 

結果的にドイツは戦争に負けるので、それによって戦車への評価が変わるのはありえることだ。しかし、現在に至るまでの戦車戦を研究してみれば分かるように、火力で相手に優れ、より遠距離から相手を撃破出来る性能というのは、戦闘において圧倒的な優位を発揮する。

また、重厚な装甲によって乗員を守ることは、資源の少ない国ほど重要なのである。たとえ敵の攻撃を受けても弾が貫通しないという安心感は戦場での行動に直結している。

 

T-34のシンプルさは良く評価される点であるが、簡素さは実際の戦車戦闘に置いては意味をなさない。それよりもT-34が登場時点において世界のどの戦車おも凌駕する装甲防御を持っていたことと高性能のディーゼルエンジンを備えていたことを最も評価すべきである。さらに、75mm砲装備で登場して後、パンター、ティーガーの出現を受けて85mm砲にすぐに換装できたのも素晴らしい。ソ連がT-34以降の新戦車を戦争中に投入しなかったのも、この戦車で大戦を勝ち抜くことが出来ると判断したのが大きな要因だろう。もし、ソ連がIS-3で完成させた対ドイツ戦車シリーズを早期に開発し戦争に投入していればそれがパンターを凌駕したかもしれない。

 

戦闘性能においてパンターはT-34を凌駕し、運用においても一定数の稼働が実現し、数千両の生産も行っていることから、総合的にパンターはT-34より優れた戦車であると言える。

 

火力

長口径の75mm砲、T-34やシャーマン戦車を1000m以上の距離から撃破出来る。より強力なスターリン重戦車であっても近距離なら正面から撃破可能。近づきさえすればどんな方向からでも撃破できるなら、戦闘はより柔軟に進められる。そういう意味で最適の主砲。

生産の簡略化において88mm砲に統一できなかった点が難点。

 

機動力

良く酷評されるドイツ戦車の機動性であるが、実戦において特別敵に劣るというデータはないのだ。戦争後期のドイツでは、常時、補給の問題があったので燃料や補給部品が欠乏するゆえ走行できなかったり故障したりすることが多くなったが、それはロジスティックの問題で、それをパンターの設計の責任にするのは強引だろう。

米国はシャーマン戦車を大量に生産し勝利に貢献させたが、大きく4種類の量産型があり、決して完成された設計ではなかった。あれだけの数がそろい、圧倒的な航空優勢があったにも関わらず、ドイツ装甲部隊に遭遇するとそれなりの損害を受け部隊は進めなくなった。連合国の兵士はドイツ戦車を恐れた。

ここからもドイツ戦車、パンターが優秀であったことが類推できる。

パンターの交差転輪
パンターの交差転輪

トーションバー・サスペンションは現代でも用いられる優秀なサスペンションの構造で、これほど戦車に適したシステムはなかった。車内容積を節約し、ほぼ理想的なばね特性を持つ。本来堅牢で大重量を支えるのに適している。60トンを超えるようになったレオパルドやM1でも用いられていることがそれを証明している。

地雷の被害を受けやすいというのは言い過ぎ、故障の際に交換に手間がかかる点はマイナス評価になる。

イスラエルのメルカバ戦車がコイルスプリングを採用しているのはこの交換の手間を嫌ったからだ。機動性を発揮して本来被害を受けないように高性能のシステムを使うか、それとも、被害を受けることを前提で修理や交換の手間を少なくするか、これに一方的な結論を出すことは難しい。

ドイツでは戦車用の高出力のディーゼルエンジンを実用化できなかった。この点はT-34に劣る部分でパンターの欠点である。

しかしながら、総じて、パンターの機動力は大戦中最高レベルであった。

 

防御力

パンターの各部の装甲厚
パンターの各部の装甲厚

装甲防御や各種防御装備は高性能で大戦中の重戦車を相手にしても十分なレベルであった。正面装甲に比べ側面装甲が薄く、機関部付近の防御が万全とは言えないが、同世代の戦車の中では優秀だった。

 

シリーズの発展

初期のA型やD型を見れば各種欠陥が見られ、信頼性は戦闘においても問題になるほどであった。実際、クルスク戦において戦場での故障車が続出したことは大問題である。ここではロジスティックの影響を受ける部分は評価に加えないが、実際の戦場で戦闘中に故障が続発するならそれは実戦闘力の欠如と見て良い。

しかし、パンターはG型において完成形となり以降ドイツの主力戦車として活躍する。戦争末期にはロジスティックの面で稼働率は極端に低下するが、それは戦車の戦闘性能評価には関係なかろう。

 

ティーガーⅡとの比較

ティーガー2 SdKfz182 Panzerkampfwagen VI
ティーガー2 SdKfz182 Panzerkampfwagen VI

正面からの戦闘性能において同じドイツのティーガーIIは傑出している。あれを量産し戦場に部隊として投入できたのはドイツの戦車技術がどれほど高度であったかを証明している。

しかしながら、パンターのとの比較においては、無駄に火力と防御を強化して機動力が低下し、それによって実戦での総合的な戦闘能力ではパンターと差異がないのだ。攻勢的な作戦で機動的に動くのに難があった。20トン以上の重量増加に関わらずエンジンやサスペンションがパンターと同等であるという点からも、ティーガーⅡが重戦車ないしは駆逐戦車的な位置づけであったことが分かる。東部前線でT-34の集団相手にいくらティーガーⅡが強くても相手を補足することが出来なかったであろう。ティーガーⅡの機動力不足は致命的と言える。

 

以上のように、

戦車として火力と装甲防御の絶対的な必要性を満足しつつ、十分な機動性を与え、高度な完成度でまとめ上げられたパンターは第二次大戦において最高の戦車であり、後世の戦車の発展を考えるなら、未来を先取りした戦車といえる。それらを評価し、戦車史上第2位とする。

本当の安全保障を国のために考えるー日本に原潜が必要な理由

そうりゅう型潜水艦
海上自衛隊の最新鋭潜水艦 スターリング機関を搭載している。
シーウルフ級原子力潜水艦
米海軍最強の原子力潜水艦 時速40ノット以上の水中速力を誇る

 

昨今、日本を取り巻く軍事環境が変化し、安全保障に関する議論も増えてきた。特に、自民党が再度政権を取ってからは、自民党自体が右派保守本流一筋になって、議席に応じた強硬な政策方針を進め、自民党右派の長年の願いであった憲法改正も話題になっている。

 

さすがに憲法改正には踏み込めず、解釈の変更だのなんだの言っている。

本政権の政策に関して考察すると、主に中国の軍事的拡張に対して、今のうちに法的な縛りをとって外交的にも軍事的にも動きやすくしようとしているようだ。

 

これらの考えの元は理解できる。

元自衛隊員として憲法で禁じられている戦力に属し、名前も自衛隊というのが複雑な気持ちにさせることもあった。

しかし、これはずっと以前からの問題であり、特に中国との軍事的対決よりも、米国の軍事的保護支配下に置かれているという実情こそが病原なのである。

 

現在、集団安全保障の行使が可能か議論しているが、これまでも、日本は米軍軍事支配下・指揮下で戦闘することは、米国はもちろんのこと、敵国のソビエトや中国も当然のことと捉えていた。

 

日米安保条約は同盟条約の中では特異な条約で、その結びつきの点では世界のどんな同盟条約より強固だと言える。

条約は日本のどの政権でも尊重され、憲法を審査する最高裁でも冒すことのできない条約になっている。日本の法制度の中で根本的に憲法抵触の恐れがある条約であるにも関わらず、日本のどんな権力組織からも手出しができない強固な法的なシステムとして日本に組み込まれているのである。

駐留する米兵に対して、不平等条約の最たる要素である実質的な治外法権を認めていることも、日本がこの条約にどれだけ強く縛られているかを表している。

経済的には多額の供与金が支払われ、沖縄では広大な土地を日本政府が肩代わりで借りて(買って)供与している。

現在の軍隊は情報システムが勝敗のカギになるのだが、この情報システム・通信システムはすべて米軍と共用可能なものにしようとしている。さらにほとんどの武器システムが米軍事技術に依存している。

 

即ち、今さら米軍との共同行動のために安全保障関連の法整備は不要であり、米軍にとって全く役に立たない。今以上に同盟を強化する法的な方策など存在しない。

 

強いて、何かの利点を見つけるなら、国連活動や米軍以外との軍事同盟に役立つだろうが、最近の国連の軍事的な影響力低下の傾向の中で、本気でその中で活躍することを考えてはいないだろう。もし考えていたら、バカ以外何物でもない。また、米軍以外の同盟を進めるほどの度量はないだろう。100年先の将来を考えれば、米国より中国と同盟する方が国は発展するだろうが、それを見通して実行できる政治家はいない。

 

以上述べてきたように、現在、憲法改正・解釈変更を行い、法制度を変更しても軍事的には何らプラスにならない、それどころか、いたずらに安全保障環境を悪化させることになるだろう。

  • 中国に対して明確な敵対的態度を見せ、その軍備強化の理由を与えている。
  • 無駄に日本への警戒心を煽り、中国内強硬派の主張に与している。
  • 米軍一辺倒になり、外交的・軍事的な方針の多様性を狭めている。

 

そもそも日本南西域の領土問題に関しては、日本は島嶼地域を実効支配しているので、静かにのらりくらりとかわすのが国策であったはずである。わざわざ教科書に問題を明記する必要はないし、言動において中国と争っても利益がない。口先だけで実際には何もできないことが余計にばれるだろう。

中国から守るべき実益とは海洋資源であり、これを守るには先に採掘できるようにしなければならない。しかし、日本はこの分野に力を入れているとは言えない。技術力は十分にありながら、資源探査・自然環境調査などには無関心である。中国が100か所掘れば日本は200か所、中国が100時間の潜水探査をすれば日本は200時間行う。

このような実際の努力が必要なのに、勇ましい言動をすることが国を守ることと勘違いしている。かつて国を滅ぼした連中に似ている。

 

今の自民党政権の政治家は、一度下野した際に有能な人材・人脈を失い、負けて傷つき拗ねたような人物ばかりである。過去に首相になっていながら、世間の評判や部下の反抗に耐え切れず辞めていった人々である。

彼らが本当に国を想って行動するとは考えられない。最初に首相になった際もかなりの歳で、それまでに何年も政治家をしてきたはず。それなのに次から次へ辞めていくのは利己的なためだ。

安全保障に関しても、自分が他国の首脳にいい恰好をしたいのが本音だろう。何とも救いようがない。

 

さて、このような愚かな為政者にも分かりやすく、もっとも効果的な安全保障の方策を教えよう。

 

それは、原潜、原子力潜水艦である。

 

原子力潜水艦は、今年度予算を付けたから来年配備できるようなものではないが、中国が本格的な空母機動部隊を作り上げることまでには(10年以上かかると言われる)現実的なものになっていると思われる。

 

一足飛びに原子力潜水艦の有用性を説明する前に、在来型潜水艦(ディーゼルエンジンとモーターの組み合わせが主)においてその説明をしよう

 

潜水艦の有用性は

  • 現在ある兵器の中で完全といえるほどのステルス性を有し、弾道ミサイルと並ぶ防御の難しい兵器である。
  • 長期間の作戦行動が可能。
  • 作戦範囲も日本からであれば西太平洋域全域を収める。(敵哨戒域では潜航しなければならないので制限される)
  • 攻撃力が高く、敵大型艦船や潜水艦など高価値目標を1発の魚雷で沈めることが出来る。
  • 機雷戦などで敵の行動を長く制限できる。(撃てばその場でお終いではなく、敵の近海などに潜み、長く脅威を与えることが出来る)
  • 単独で作戦可能で、必要な他種兵力の支援が少ない。

とこれだけの利点を有する兵器は他にないだろう。

 

現状では、最新鋭の対潜哨戒機ですらアクティブソナー探知でないと潜水艦を発見できないので、哨戒域はそのソナーの投下数と探知半径により自ずと制限され、事前の情報により潜航している海域を限定出来なければ探し出すことは難しい。

(アクティブソナー探知とは、艦船やソノブイから音を発信し、相手艦から反射した音を探知することで捜索する方法。かつてはパッシブソナーも有効であったが、潜水艦があまりに静かで沿岸域を行動するため、相手艦が発する騒音を捉えることは難しくなっている。)

 

このように、潜水艦であればどれもが持つ利点に加え、日本は潜水艦建造の先進国で、おそらく在来型潜水艦では世界最高性能の潜水艦を建造できる。

モーター推進時にはほぼ無音で航行可能で、備えるソナーと戦闘システムは最高の性能、さらにはスターリング機関も有し、作戦海域で1週間連続の潜航も可能となっている。

 

但し、在来潜は蓄電池充電のためにシュノーケリングが必要で、この際、哨戒機に発見される可能性がある。

シュノーケリングとは、人間が潜水に使うシュノーケルと同じで、マストの先につけた小さな空気取り入れ口から外気を取り入れ、船内の汚れた空気を排出すること。ディーゼルエンジンの吸気排気にも用いて、これにより蓄電池を充電する。

シュノーケリングに使うマストの装置は非常に小さく、ステルス性も考慮された形状になっているが、それでも高性能の哨戒機のレーダーであれば発見可能で、蓄電池を完全に充電するまでの時間(1時間から2時間程度か)があれば被発見率は格段に高くなる。

 

だから、安全に作戦するためには、

  • 出航後)哨戒済みの自国制海圏内で最後のシュノーケリングを行い充電し潜航、
  • 航海中)蓄電池の40%程度を使って作戦海域へ向かい、
  • 偵察)目標地点でスターリング機関を用いて捜索・探知を開始。
  • 攻撃)目標が潜水艦であれば対潜哨戒機からのアクティブソナーや海底聴音器から支援を受けつつ探索し、発見すれば報告するか、自艦で攻撃する。
  • 退避)自艦で攻撃した場合、そのおおよその位置を把握されるので、すぐさま移動しなければならない。その際、スターリング機関では遅すぎるので、蓄電池を使うことになり、充電容量が半分以下になる前に帰還せねばならない。帰り道の潜航分の電池容量をのこしておかなければ、帰路、敵の勢力圏内でシュノーケリングを実施せねばならず極めて危険だからだ。
  • 帰港)制海権内に入れば自由にシュノーケリングが可能になる。

のように行動する。

 

これらの作戦行動から逆算し、在来潜の作戦域は、相手哨戒域より蓄電池容量半分だけ航行した地点と簡単に言える。

現在、自衛隊の潜水艦は蓄電池で巡航した場合、2日程度航行可能で、その速度を10ノット程度と見積もると480海里潜航しての航行が可能、その半分が作戦進出域となるから240海里が作戦行動域になる。

240海里というのは約432キロメートルなので、もし日本が西垣島までの制空権・制海権を維持していれば、優に中国沿岸まで進出できる距離だ。

1隊の哨戒機による哨戒半径を50キロメートル程度としてその範囲外から潜航するとしても300キロメートルは進出可能なので、尖閣諸島は完全に潜水艦の活動範囲内である。

中国の有する潜水艦と哨戒機では到底敵潜水艦を防ぐことは出来ないので、もし尖閣諸島近海で日本と戦争すれば、その補給線は常に潜水艦の脅威にさらされ、防御手段のない、鈍足の輸送船などは航行できないであろう。

輸送船などには潜水艦を探知する手段がなく、欺瞞装置などもなく、航行速度が遅いので潜水艦はそれをパッシブソナーで探知し、潜航速度で追いつき、一度も相手に悟られることなく魚雷を発射して攻撃できる。

敵船団に護衛艦がついていれば反撃は可能であるが、機雷を併用し、遠距離より対艦ミサイルを用いることも可能で、発見した敵艦の情報を伝えれば、海上艦艇や航空機より対艦ミサイルで攻撃可能である。

 

もちろん、これは日本にとっての中国潜水艦隊も同様で、青島あたりの港から出航すれば、日本南西域全体が潜水艦の脅威にさらされる。日本は世界でも米軍に次いで対潜作戦に秀で、その対潜部隊は最優秀と言って過言ではない。しかしながら、最強の対潜部隊であっても、すべての潜水艦を阻止するのは難しいのである。

だから、潜水艦を用いて戦争を行うというのは、各々が一程度の犠牲を必ず伴うという、核兵器の相互確証破壊のような抑止力があり、核戦力を搭載せず、原子力潜水艦でもない潜水艦であっても、戦略的な兵器である。

 

そして、今、潜水艦や対潜兵器の戦力は日本の方が中国を上回っている。

中国の原子力潜水艦はいまだ静粛性に問題があり、これは潜水艦にとっては致命的。在来型潜水艦も旧式の潜水艦がいまだ多く、まともな戦力を旧ソ連のキロ型以降と見積もっても、キロ型12隻、元型4隻就役、3隻建造中、で総計19隻。

対潜哨戒機で最新の潜水艦を探知できるものは少ない。

 

一方、自衛隊は、

現在16隻の潜水艦を配備し、今後、退役年数を延ばすことで22隻に増勢する。元々、自衛隊は潜水艦の隻数を制限するために16年で退役させていたので、それを22年程度に延ばしても問題ない。戦闘システムは後記のように年々進歩しているので陳腐化してくるので、できれば改良すべきである。

対潜哨戒機は、現在も一線級のP3Cをはじめ80機程度が配備されている。米海軍がもつ対潜哨戒機が100機程度であることを考えるといかに多数の対潜哨戒機を有しているか分かる。

P1対潜哨戒機
海自最新鋭の対潜哨戒機 現有のP3Cでも世界トップクラスの性能なのにさらにその上をいく性能

 

また、自衛隊で潜水艦乗員は最優秀である。潜水艦での乗務は非常に特殊で、特別な訓練と適正が必要である。そして、軍も彼らが特別な軍人であることを認識して扱う必要がある。例えば潜水艦内の食事は非常に美味しいと知られているが、これは彼らの環境が過酷で、それに値する待遇が必要だと自覚しているからだ。

一方の中国海軍は潜水艦乗員の訓練練度が低く、昼間働き夜は陸上に戻って寝る習慣があると言われてきたように、潜水艦に何週間もこもって生活することさえ難しいようだ。今も、原子力潜水艦で定期パトロールに出られない原因の一つは、乗員が長期間の潜水艦内での生活を出来ないのも一因と考えられている。原子力潜水艦のパトロールは数か月に及ぶが、これを実現するには相当の訓練体制と組織の強化が必要である。

 

以上のように、潜水艦と対潜戦力に関して、日本は中国に対し、1国で優勢を保っている。

潜水艦は他戦力が劣勢であっても十分な脅威であることは、二回の大戦が証明している。第一次大戦、第二次大戦ともドイツは英海軍に劣っていたが、多数のUボートを運用することでその補給線を脅かした。第二次大戦末期には米軍対潜部隊の増強、対潜兵器の開発、大洋に開けた母港の占領、暗号の解読などによりほぼ全滅したが、これは米軍の圧倒的な物量の差のみが成しえた戦略であり、同様の技術力、情報力を持っていた英国には不可能だった。それほど、潜水艦は攻める側に有利で守るには不利なのだ。

太平洋戦域での日米の戦いにおいては、物量に勝る米軍がより有効に潜水艦を用いて、日本の一般商船を含む全喪失艦船トン数の半分を米潜水艦部隊によって沈められている。日本はまさに潜水艦によって飢え衰えたのである。

この時の教訓が自衛隊をして最強の対潜部隊に育て上げた要因であろう。

 

潜水艦とよく似た性格の部隊が機雷戦部隊である。機雷とは海の地雷であるが、その姿、効果などは全く違う。

うわじま型掃海艇
海上自衛隊の掃海戦力は世界最高峰

機雷はそれ自体が無人潜水艦と言えるほどの兵器なので、その性能などは各国でも最高機密になっており、まともな写真すらほとんどない。元々はおもりをつけて沈めた触発信管付きの爆雷(海に落とす爆弾)で、一定の深度に沈められ、そこを船が通って触れると爆発する。威力は昔から強力で、一発で戦艦すら撃沈させる。

機雷
繋留型機雷は昔からある機雷だが年々高性能化し、除去は難しい。

そして現在では、機雷それ自体がセンサーを有し、常にあたり一帯を監視して、敵の偽装を見抜き、本当の目標を探知した時には離れたところでも自走し、自動的に追尾して撃破する。基本的に潜水艦が装備する魚雷の発展形であるが、魚雷そのものが高度に進歩しているので、機雷を設置することは、そこに潜水艦を配備するのと同じ効果があると言える。

機雷戦部隊は別名「掃海部隊」ともいい、設置された機雷を除去して無力化するのが主な任務である。これは設置に比べ、除去・無力化する方がはるかに難しいからほぼそれに注力しているのである。

掃海に関してはここでは触れないが、実際のところ掃海能力がなければ機雷戦を有利に戦うことは難しく、この分野においても日本は世界最高峰の能力を持っている。

 

機雷の設置は潜水艦でも可能で、通常、魚雷の代わりに機雷を搭載できる。機雷は魚雷と同様のサイズに作られていて、魚雷発射管から発射し、その後自動的に目標地点に移動し、指定した時間後に作動する。

最新の機雷は敵味方識別も可能で、暗号化された通信で指示も受けることが出来る。魚雷と同程度なら射程は10キロメートル近くになるが、実際は目標の音響信号を正確にとらえて識別する必要があるので、設置点から数キロ程度が有効範囲であろう。センサーはアクティブ・パッシブソナーを備え、信号受信用のアンテナブイを持っている場合もあるだろう。後々の掃海のために自己無効化機能を備えているだろう。

このように高性能な機雷は、いったん、戦闘海域に設置されると除去は不可能で、定点防御に関しては潜水艦より有効である。

仮に、潜水艦の搭載魚雷(約20発)のうち10発を機雷にして、敵領海内航路の浅い部分に設置し、少し深さのあるところで潜んでいれば残りの10発で計10万トン程度の商戦を沈めることはたやすい。近くに護衛艦がいて発見の恐れがある場合は、発見した目標に関しての情報をステルスビーコン(情報送信のために少し離れたところまで進んでから浮上し、メッセージを送信する。海中から直接電波通信することは難しい)を使って連絡するだけで良い。後ははるか遠くに待機している味方艦船より対艦ミサイルを撃って沈める。

1隻の潜水艦が航路に潜むだけでいかに危険であるかを考えたとき、領海内で潜航していれば、それが即戦争行為とみなして対処するのは正しい。昔はアクティブソナーの代わりに爆雷を使っていたが、領海内に敵性潜水艦がいれば爆雷を至近に落として警告してもそれは正しい。

但し、現政権がそれらを「集団的自衛権」(なんじゃこりゃ)に絡めて言及するのはおかしい。

 

詳しい数字は述べないが、日本は機雷戦・掃海戦力に関しても中国に対して優勢である。実戦経験も豊富で訓練密度も高度である。

ペルシャ湾で行った掃海任務こそが自衛隊で唯一経験した海外実戦戦闘任務である。日本近海では戦後長くにわたり、第二次大戦当時の米軍の機雷掃海を続けていた。

 

 

どうであろう、もし日中が戦争するならこの戦力を使わなければ馬鹿だ。それほど有用で相手にとって脅威になる戦力を優勢に維持してきたのだから、今後もこれを強化し、中国への抑止力とするのが最高の策であろう。

潜水艦の場合、優勢を維持するのに多数は必要ない。一定数あれば良い。(少なすぎれば効果ない)現在の目標の22隻で良いだろう。一番必要なのは戦闘システムの改良・開発と推進システムの改良である。

推進システムとはエンジンやモーター、電池のことで、原子力を使えばすべて解決する。無限の航続力と潜水期間は潜水艦を最強の存在にする。事実、日米の共同訓練においても、1隻の原子力潜水艦を追跡することがいかに難しいか、24時間追跡しただけでその後の自慢話になることから分かる。

原子力潜水艦は一度潜航すると6か月間(乗員の食糧が必要なため)浮上する必要がなく、シュノーケルもなにも必要ない。しかも、原子力では常に最高速度で航行でき、潜水艦には造波抵抗が生じないので騒音の問題さえなければ時速40ノットも可能で水上艦艇よりずっと速い。仮に、同程度の静粛性のまま速度が3倍になると探索範囲は9倍になるので、性能は9倍アップしているといえる。

 

日本は大きな原発事故を起こし、今後、かつてのようにたくさんの原発を運転することは出来ないだろう、それが原子力技術の継承にダメージになるというなら、潜水艦の動力源として使うことで新たな技術力向上につながるではないか。

 

しかしながら、それをすぐに行うは難しいであろう。

その代わりの手段として充電池システムを高容量のリチウムイオン電池に変えることである。

現在この電池は以前の鉛蓄電池より非常に高価であるが、先に述べた速度との関係で分かるように、電池容量は航行能力の増加に、航行能力は潜水艦の性能に直結している。それゆえ、もしリチウムイオン電池の搭載によって価格が3倍になったとしても航行能力が倍程度向上すれば十分元がとれる。

実際、リチウムイオン電池は鉛蓄電池やニッカド電池にくらべ容積当たりのエネルギーで2~5倍程度あり、これはほぼそのまま航行性能に直結する。

コストは、kwhあたり4倍程度であるが、船価のすべてが電池ではないので、船価全体では2倍程度までに収まると思われる。

現在最新鋭艦のそうりゅう型は1隻500億円なので、リチウムイオン搭載型は1000億円程度か。イージス艦が1500億円程度なのでイージス艦を1隻我慢すればこの潜水艦とおつりが500億円か、十分元が取れる。

イージス艦よりもひゅうが型のような中途半端な大型艦や海上保安庁の巡視船しきしま級のような無駄な出費を抑えれば、より現実的な選択になる。

中国のように目立つ空母型艦船を増強するのではなく、かつてのソビエトやドイツのように、潜水艦大国を目指すべきなのだ。

はっきり言って、弾道弾防衛のためのイージス艦なんて必要ない。

北朝鮮のノドン型ミサイルのみ限定で、米軍の早期警戒情報たのみで、迎撃確率も中途半端な迎撃システムなんて後回しで十分だ。現在の中国のICBMには全く効果がないのだから、無理に装備する必要はないのだ。開発は今後必要なので行うべきだ。将来、弾道弾を迎撃可能になれば、日本はロシアや中国などの核大国の脅威から解放されるからだ。

 

弾道弾迎撃システムの装備や中途半端なヘリ空母の装備をやめればリチウムイオン電池装備艦は十分可能。さらに僻地防衛のために貼り付け部隊を置くことや性能の変わらない戦車を開発し3種類も配備するのも無駄だ。

本当に日本の防衛を考えたとき、緊急に必要なものは何か検討すればすぐに答えは出るだろう。

 

以前より必要性が減った装備、

  • 主力戦車
  • MLRS(クラスター爆弾禁止条約に加盟したので使えない)
  • AAAV-7水陸両用装甲車
  • AH-64アパッチ(数が少なすぎて使えない、実戦部隊に配備できるのは4機程度)
  • ひゅうが型護衛艦(護衛されるほうなのに重武装、戦闘に巻き込まれた時点で負けている)
  • 陸自配備の長距離対艦ミサイル(陸自は空自や海自からの情報を共有してないので射距離がいくら長くても狙えない)
  • F-35ライトニング(開発のめどがたっていない、艦上機と共用部分を作ろうとして無駄な要素が多い。)

以前より必要性が増した装備

  • 潜水艦(原子力潜水艦)
  • 輸送艦(ヘリ輸送可能な甲板のある高速の輸送艦、揚陸艦でなくて良い)
  • 無人偵察機(戦略・戦術偵察用)
  • オスプレイV-22

 

このように、中途半端に残すより、ばっさり切った方が、より有用な兵器を新たに装備できるのだ。

また、変に改造した国際協力用の装備はやめた方が良い。現在の日本・自衛隊にはイラクやアフガンのような一般市民と区別できない敵と長期間居座って戦うメリットはない。彼の地ではっきりしない正義のために戦争できるような余裕はないだろう?目の前に中国という強敵がいるのに。

そして、本当に必要な際には変に改造した装甲車でなく、MBTを投入すべきだ。MLRSの荷台に装甲キャビンを置けばそれも結構使えるかも。

オスプレイは僻地に駐屯地を作って無駄な死に駒を配備するより部下思いだ。沖縄の普天間では問題があっても、本土に配備する分には文句はないだろう。

 

これらの思考の変化によって、自衛隊はより実戦的で使い勝手の良い軍隊へ進化するだろう。しかも、追加予算は不要で、国内の兵器開発・生産関連企業にも利点が多く、何らの国内法規変更の必要もないのだ。

 

 

日本の現在の軍事的脅威の変化は中国のみであり、以前よりずっと対処しやすい。朝鮮半島での戦争などに巻き込まれるような事態を考慮しなくてよいからだ(今なら韓国軍が独力で対処できる)。米国と中国が戦争して、日本が援助しなくてならないようにもならない。米軍はいまだ世界最強で核超大国だからだ。つまり、日本は、正面装備においては、中国が日本の南西域で軍事侵攻する場合だけを考えれば良いので、その準備はたやすい。

現在の日本人の多くと為政者は変化のみに目を囚われ、脅威の本質が見えていない。本質を見なくては戦争には勝てないのに。

 

中国は日本から海で隔てられ、強力な同盟国はない。共産主義政権でありながら資本主義経済の先頭に立つという大きな矛盾をかかえ、周辺には潜在的な敵対国が多い(台湾・ベトナム・インド・ロシア)

良く、守る敵に勝つには3倍の兵力が必要と言われるが、日本の場合、国土を囲む海が最大の防壁になってくれる。

国民は総じて平和的で安定している。

技術レベルは高く、米国という強力な同盟国がある。

さて、これで戦略的に有利なのはどちらであろうか?自明である。

そして、この結論が導けない者は愚かであろう。

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楽天は少し値段が高めだが、その分、ポイントなどの特典が多く、たぶん女性にはうけると思う。

山崎パンのお皿のポイントシールなどとよく似ている。

そういう自分も、広告収入のほとんどは楽天で得ている。楽天のユーザーは口コミや評価を見て決める人が多いのではないだろうか。

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私はアマゾン派だが、自称愛国者は楽天を使えばよいだろう。

ロシアにとってのウクライナ、クリミア半島軍事侵攻

現在、ウクライナ、クリミア半島の情勢が緊迫しています。

欧米各国、日本はロシアのクリミア半島への事実上の軍事侵攻に批判を寄せています。

しかしながら、そもそもの原因から考察すると、ウクライナの政変に欧米が不用意に干渉したことが、今回の軍事侵攻を引き起こしたと言えるでしょう。

かつて、バランス・オブ・パワーというゲームがありました。
冷戦時代の世界を世界大戦になるのを防ぎながら自陣営の勢力圏を広げていくという、実際の米ソの冷戦そのものを扱ったゲームでした。

このゲームを最高難度で挑戦するのは非常に大変で、通常のゲームスキルではクリア不可能とさえ言われていました。
これを、クリアするコツは、相手陣営(ソ連側)の勢力圏に手を出さないことでした。
チェコやハンガリーで動乱があっても反体制運動を援助するなどせず、自陣営を守ることに徹するのです。時に、相手が自陣営側にちょっかいを出した際に、それに厳しく報復することで自国の威信を高めるのです。

今回のウクライナの件は、かつての国際情勢分析で言えば簡単なケースだったはずです。
即ち、ウクライナに対しては暗黙にロシアの影響を認めるということです。
中国にとっての北朝鮮、アメリカ合衆国にとってのキューバと同じことです。
世界の大国にとって自国の勢力圏と思っている、センシティブな地域を自分側に引き入れたり、そこへ侵攻したりするのは非常に危険で、常に戦争の危険をはらんでいるのです。
一歩間違えば核戦争の可能性があります。

クリミア半島はかつてよりロシア南部、黒海周辺での要衝でした。
独ソ戦では独軍の南部方面の軍はここを攻略しなければ先へ進むのが困難だった。半島で守りやすく、黒海を経て海軍も行動可能で、陸にも海にもにらみを利かすことのできる地であった。
現在でも、黒海は地勢的な安定のために、ボスポラス海峡を空母は通過できないなどの国際的な取り決めがあり、緊張を起こさないように配慮しているはずだった。

クリミア半島の要塞をめぐる第二次大戦の独ソの戦い。世界最大の自走砲カールも投入
クリミア半島の要塞をめぐる第二次大戦の独ソの戦い。世界最大の自走砲カールも投入

ロシアと英国・トルコ同盟軍が戦ったクリミア戦争当時には、黒海にも英国の覇権が及び、黒海は長く小アジアの帝国、つまりトルコの支配下にあった。
しかし、ロシアは広大な領域をもって、一貫して勢力を伸ばし、この地域は常にロシアの南下の対象となってきた。
ソ連崩壊後も、この地域のロシアの影響力は変わらず、黒海・カスピ海周辺国家への、躊躇のない干渉などを見ると、イデオロギーに関わらず、ロシアが南方への勢力拡大に不変の欲求を持っているように考えられる。

近々の状況では、確かに、ウクライナの旧政権は人権問題などがありましたが、反体制側を支援して、政権を倒した後、同盟国(自陣営)にするなど、とんでもなく無謀です。
戦争の危険を冒してまで政変を支援する必要があったでしょうか?
欧米は、中東の王政国家やイスラエルに対するときと同じように慎重に行動すべきでした。

今回の、ウクライナの政変からクリミアへの侵攻までの経過を見ると、当初、ロシアは非常に控えめな行動をとっていた。オリンピックを挟んでいたこともあるでしょうが、ウクライナで旧政権が倒れてもしょうがないと思っていたのではないでしょうか。
旧政権ヤヌコーヴィチ大統領をウクライナに留め、ロシア軍の勢力下で保護すれば、いくら軍と警察が反旗を翻しても政権は倒れないだろうし、新政権側に影響を与える方策もいくらでもあったでしょう。
それなのに、欧米は、実際に総選挙も行っていない、暫定の政権を承認し、各種の経済援助やEU加盟を約束した。あからさまで、ロシアへの配慮は全くなかった。

そもそも、自陣営に引き入れる明確な態度を示さなくても政変は起こったであろうし、欧米にとって友好的な政権は樹立したであろうと思われます。
ウクライナでは民主的な変革の経験があり、かつ軍部の力は東西(NATOとロシア)の力関係から制限されていた。ロシア寄りの政権が長く続けば、次は欧米寄りの政権、次の選挙ではまた別の政権といったように、民主国家らしい政権交代が出来たであろうと思います。
大規模なデモや過激な勢力間で闘争があっても内乱になる危険性が少ない国だった。
まして、EUとNATOは、以前、ウクライナの加盟を検討した際に、ウクライナを自陣営に入れるのは時期尚早と判断したはず。

もし、欧米が本気でウクライナを勢力圏に引き込みたいなら、ロシアより先に軍事行動を起こすべきだった。そうしなければウクライナを保護することなど不可能だからだ。

  • 黒海に艦隊を派遣し
  • 空母を地中海に増派し、

    地中海域で活動している米海軍、第六艦隊。
    地中海域で活動している米海軍、第六艦隊。
  • ポーランド・ウクライナ国境で大規模な演習を行うべきだった。

    ポーランドはNATOの最前線である
    ポーランドはNATOの最前線である
  • バルト三国にNATO軍を増派すべきでした。

ここまでしなければ、今回のクリミアへの侵攻を食い止められなかったでしょう。

もし、この提案をすれば、鈍感な欧米首脳でも戦争の可能性に気付くでしょう。
しかしながら、今回欧米が行ったのは、軍事行動を伴わず、同程度の挑発を行ったことでした。

NATO・EUの東方への拡大、ロシアの孤立は核大国のロシアの力を形骸化するための理想ですが、世界を滅ぼす力を持つ国に対するにはよほど慎重でなければなりません。

既に欧米首脳は自分たちの対応の失敗を自覚しているでしょう。今後は、その失敗を忘れず、ロシアを追い詰めないよう、ほどほどの制裁に留め、ロシアが再び協調関係に戻れるような道を残しておくことです。
ウクライナの新政権も右派を排除し、ある程度ロシアの影響を認めるように方向修正が必要だし、それは欧米各国の意思によって可能です。

また、騒乱が長引くと過激派勢力が目をつけ侵入してくるので、欧米・ロシア共に、ウクライナ国内の騒乱状態を出来るだけ早く収め、治安を回復し、総選挙を行うことが必要です。これに関しては、新政権下であってもロシアは協力する方が利益になるし、ここで両者が譲歩できる場面も出てくるはず。

少なくとも、ヨーロッパだけでも平和であってほしいものです。