タグ別アーカイブ: 第二次世界大戦

戦車TOP10 第2位 パンター戦車

第二次大戦のドイツ戦車パンターです。

Panzerkampfwagen V Panther 制式番号:Sd.Kfz.171

パンター戦車
パンター戦車
パンターG型後期型
性能諸元
全長 8.66 m
車体長 6.87 m
全幅 3.27 m
全高 2.85 m
重量 44.8 t
懸架方式 ダブルトーションバー方式
速度 46 – 55 km/h(整地) 27 – 33 km/h(不整地
行動距離 170 – 250 km
主砲 70口径75 mm Kw.K.42 L/70(79発)
副武装 7.92 mm MG34機関銃×2(4,200発)
装甲 砲塔前面110 mm 傾斜11° 側・後面45mm 傾斜25° 車体前面80mm 傾斜55° 側面40mm 傾斜40° 後面40mm 傾斜30°
エンジン Maybach HL230P30 水冷4ストロークV型12気筒ガソリン 700 hp (520 kW)
乗員 5 名

 

タイガー戦車と並んで有名なドイツの最優秀戦車。

Ⅰ号戦車から続く第二次大戦中に開発されたドイツの主力中戦車。

Ⅴ号戦車(Panzerkampfwagen V)と呼ぶが実際はⅥ号戦車のタイガー戦車よりあとに制式化されている。

 

戦車は第一次大戦で生まれ、第二次大戦で大きく発展した。塹壕戦という形態を一気に陳腐化させ、装甲化した機械化部隊による機動戦略が作戦の基本となった。まさに陸戦の王者になったと言ってよいだろう。

この機甲戦略を最初に実戦に用いたドイツで、その提唱者だったハインツ・グデーリアンは必要な戦車の性能を思い描いていたが、それを初めて具現化したドイツ戦車がパンターだ。

 

パンターはソ連のT-34を研究した結果を設計に反映させている為、傾斜装甲や東部前線の不整地を走行できる機動性を備えている。

開発にはMAN社とダイムラー・ベンツ社が競争設計に参加し、ベンツ社の設計はT-34に形状が似ている。

パンターの試作案
ベンツ社の設計はT34に酷似している

このことからT-34がいかに大きな影響を与えたか分かる。戦車史へ与えた影響を評価するならT-34がトップになることは間違いない。しかし、ここでの順位は影響でなく、実戦での性能を評価するのでT-34はパンターに劣る。これは、単に後から開発されたからパンターが優秀という以上に、革新的な技術力を導入し、利用できる資材、戦略を考慮して、最も戦場に必要な性能を備えた戦車を送り込めたということが重要なのだ。

 

 

T-34とどちらが優秀か

T34/85
T34/85

では、T-34よりパンターは優れているだろうか?

勿論である。しかしながら、これほど無意味な考察はない。両者とも当時与えられた任務に最適で他を寄せ付けない性能を発揮して戦いに貢献したからだ。

それでも、無理やりにでも優劣をつけようとするなら、、

 

T-34は当然85mm砲装備型を相手に検討する。

パンターとT-34が合いまみえた場合を考えればすぐに結論は出る。T-34ではパンターは倒せないであろう。装甲も火力もパンターが勝り、より遠距離で有効な攻撃を加えることが出来る。重量はパンターの方が重いが、それに十分な機動力を与える機関を有し、優秀なトーションバー・サスペンションによって不整地でもT-34に勝る機動性を誇る。

 

世間にある大きな誤解の中に、ドイツ戦車は火力装甲に優れるが鈍重というのがあるが、あれだけの重量を駆動できるエンジンとトランスミッションを開発できたのがドイツだけであったとこを忘れてはならない。資源が乏しく生産力に劣るドイツが、米国やソ連の戦車と対するのに、相手が持っていない技術を使わないということがありえるだろうか?兵器は常に戦う相手を考えて設計される。それなら、相手にない能力を加えより有利に戦闘できるようにするのが当然だ。

たとえ最高速で劣っても、レースで戦う訳ではないのでそれは関係ない。逆に不整地でスタックせず機動的な作戦を実行できるかがカギになる。パンターはその能力を備えていると言えるだろう。

 

結果的にドイツは戦争に負けるので、それによって戦車への評価が変わるのはありえることだ。しかし、現在に至るまでの戦車戦を研究してみれば分かるように、火力で相手に優れ、より遠距離から相手を撃破出来る性能というのは、戦闘において圧倒的な優位を発揮する。

また、重厚な装甲によって乗員を守ることは、資源の少ない国ほど重要なのである。たとえ敵の攻撃を受けても弾が貫通しないという安心感は戦場での行動に直結している。

 

T-34のシンプルさは良く評価される点であるが、簡素さは実際の戦車戦闘に置いては意味をなさない。それよりもT-34が登場時点において世界のどの戦車おも凌駕する装甲防御を持っていたことと高性能のディーゼルエンジンを備えていたことを最も評価すべきである。さらに、75mm砲装備で登場して後、パンター、ティーガーの出現を受けて85mm砲にすぐに換装できたのも素晴らしい。ソ連がT-34以降の新戦車を戦争中に投入しなかったのも、この戦車で大戦を勝ち抜くことが出来ると判断したのが大きな要因だろう。もし、ソ連がIS-3で完成させた対ドイツ戦車シリーズを早期に開発し戦争に投入していればそれがパンターを凌駕したかもしれない。

 

戦闘性能においてパンターはT-34を凌駕し、運用においても一定数の稼働が実現し、数千両の生産も行っていることから、総合的にパンターはT-34より優れた戦車であると言える。

 

火力

長口径の75mm砲、T-34やシャーマン戦車を1000m以上の距離から撃破出来る。より強力なスターリン重戦車であっても近距離なら正面から撃破可能。近づきさえすればどんな方向からでも撃破できるなら、戦闘はより柔軟に進められる。そういう意味で最適の主砲。

生産の簡略化において88mm砲に統一できなかった点が難点。

 

機動力

良く酷評されるドイツ戦車の機動性であるが、実戦において特別敵に劣るというデータはないのだ。戦争後期のドイツでは、常時、補給の問題があったので燃料や補給部品が欠乏するゆえ走行できなかったり故障したりすることが多くなったが、それはロジスティックの問題で、それをパンターの設計の責任にするのは強引だろう。

米国はシャーマン戦車を大量に生産し勝利に貢献させたが、大きく4種類の量産型があり、決して完成された設計ではなかった。あれだけの数がそろい、圧倒的な航空優勢があったにも関わらず、ドイツ装甲部隊に遭遇するとそれなりの損害を受け部隊は進めなくなった。連合国の兵士はドイツ戦車を恐れた。

ここからもドイツ戦車、パンターが優秀であったことが類推できる。

パンターの交差転輪
パンターの交差転輪

トーションバー・サスペンションは現代でも用いられる優秀なサスペンションの構造で、これほど戦車に適したシステムはなかった。車内容積を節約し、ほぼ理想的なばね特性を持つ。本来堅牢で大重量を支えるのに適している。60トンを超えるようになったレオパルドやM1でも用いられていることがそれを証明している。

地雷の被害を受けやすいというのは言い過ぎ、故障の際に交換に手間がかかる点はマイナス評価になる。

イスラエルのメルカバ戦車がコイルスプリングを採用しているのはこの交換の手間を嫌ったからだ。機動性を発揮して本来被害を受けないように高性能のシステムを使うか、それとも、被害を受けることを前提で修理や交換の手間を少なくするか、これに一方的な結論を出すことは難しい。

ドイツでは戦車用の高出力のディーゼルエンジンを実用化できなかった。この点はT-34に劣る部分でパンターの欠点である。

しかしながら、総じて、パンターの機動力は大戦中最高レベルであった。

 

防御力

パンターの各部の装甲厚
パンターの各部の装甲厚

装甲防御や各種防御装備は高性能で大戦中の重戦車を相手にしても十分なレベルであった。正面装甲に比べ側面装甲が薄く、機関部付近の防御が万全とは言えないが、同世代の戦車の中では優秀だった。

 

シリーズの発展

初期のA型やD型を見れば各種欠陥が見られ、信頼性は戦闘においても問題になるほどであった。実際、クルスク戦において戦場での故障車が続出したことは大問題である。ここではロジスティックの影響を受ける部分は評価に加えないが、実際の戦場で戦闘中に故障が続発するならそれは実戦闘力の欠如と見て良い。

しかし、パンターはG型において完成形となり以降ドイツの主力戦車として活躍する。戦争末期にはロジスティックの面で稼働率は極端に低下するが、それは戦車の戦闘性能評価には関係なかろう。

 

ティーガーⅡとの比較

ティーガー2 SdKfz182 Panzerkampfwagen VI
ティーガー2 SdKfz182 Panzerkampfwagen VI

正面からの戦闘性能において同じドイツのティーガーIIは傑出している。あれを量産し戦場に部隊として投入できたのはドイツの戦車技術がどれほど高度であったかを証明している。

しかしながら、パンターのとの比較においては、無駄に火力と防御を強化して機動力が低下し、それによって実戦での総合的な戦闘能力ではパンターと差異がないのだ。攻勢的な作戦で機動的に動くのに難があった。20トン以上の重量増加に関わらずエンジンやサスペンションがパンターと同等であるという点からも、ティーガーⅡが重戦車ないしは駆逐戦車的な位置づけであったことが分かる。東部前線でT-34の集団相手にいくらティーガーⅡが強くても相手を補足することが出来なかったであろう。ティーガーⅡの機動力不足は致命的と言える。

 

以上のように、

戦車として火力と装甲防御の絶対的な必要性を満足しつつ、十分な機動性を与え、高度な完成度でまとめ上げられたパンターは第二次大戦において最高の戦車であり、後世の戦車の発展を考えるなら、未来を先取りした戦車といえる。それらを評価し、戦車史上第2位とする。

【陸軍-AFV-ロシア-二次大戦】戦車TOP10 第3位 T-34

第2次世界大戦中の最優秀戦車 ソ連T-34

当然これが出てきます。大戦後半から戦後第2世代戦車にまで影響を与え続けた傑作戦車である。

T-34
T-34

全長

8.15 m

車体長

6.10 m

全幅

3.00 m

全高

2.72 m

重量

32 t

懸架方式

クリスティー方式

速度

55 km/h(整地)
30 km/h(不整地)

行動距離

360 km

主砲

85mm ZiS-S-53(56発)

副武装

7.62mmDT機銃×2(1890発)

装甲

砲塔前面90 mm(曲面)
側面75mm 傾斜20°
後面52mm 傾斜10°
車体前面45mm 傾斜60°
側面45mm 傾斜50°
後面45mm 傾斜47°
上面20mm

エンジン

4ストロークV型12気筒
水冷ディーゼル
500 馬力

乗員

5 名
 
 この戦車がアメリカの戦車研究者のクリスティの戦車を元に作成されたコピーだとか、量産性だけに優れているとかのアホな話はどうでもいいです。それらは多かれ少なかれ嘘です。
T-34が優れているのは、余分な機能に関してはオーソドックスな技術を採用し、ディーゼルエンジン、装甲金属板の鋳造技術などに関しては、しっかりと研究と技術の積み重ねを行い、世界最高のものを実現していることである。そして、それらのパッケージングにおいて、戦車そのものに必要な要求機能をしっかりと実現していることである。
 
 まず、技術的な部分では、ディーゼルエンジンが当時の世界最高峰のものと言える。ソ連はその前進の帝政ロシア時代から自動車技術に関しては後進国で、ドイツ・イギリス・フランス・アメリカのような優れた技術的蓄積は無かった。しかし、ソ連になって、世界各国の「敵」となると、どうしてもソ連で生産可能な「エンジン」が必要になった。このため、ソ連は可能な限りの技術的知識を積極的に輸入し、世界が後進国と侮っている間に、世界レベルのエンジン技術を獲得したのである。ディーゼルエンジンは当時のドイツやイギリスなどでも立派なものがあったが、より高性能で「繊細」なガソリンエンジンの方に目が向いていたので、軍用エンジンとしてのディーゼルエンジンが多用されることは少なかった。これは、各国の化学工業、補給・輸送能力なども反映している。ソ連には揮発性のガソリンを大量に輸送するタンク車なども少なかったことに注目する必要がある。また、ソ連の寒冷な気候も考慮された。
 ソ連戦車の装甲はドイツ戦車のそれと比べ、同じ厚さであれば明らかに劣る。鋳造であれば当然である。しかし、多少の防御力の低下を偲んでも、その生産性と防御を考慮した形状を実現できることで十分ペイする。ドイツのタイガー戦車があれだけの装甲をまっすぐ立てるたこととの設計上の差を考えると明らかである。
 懸架装置は例のクリスティ式である。これはクリスティの特許を採用して発展させたものだ。オリジナリティはない。しかし、最も近くでプレゼンを見たアメリカ陸軍ではなく、海の向こうのソ連がそれに注目し採用したことの選択眼こそを評価すべきだろう。そして、ソ連は最初にクリスティ戦車の設計をほぼそのまま採用したBT戦車系列を作製した。もちろんそれほどの性能でもない。悪くも無かったが、ドイツやアメリカが将来開発するであろう戦車に比べると不十分だった。当時のソ連首脳部は仮想敵国の技術を過大評価し本当に恐れていたのだ。この過程での試作車両に対する評価とその後の軍の判断を、当時同じように色々な戦車を試作したイギリスと比べるといい。イギリスが産み出したのは、それほど快速でもなくそれほど重武装でもない巡航戦車であり、ソ連はこのT-34を産み出したのだ。
 
 当時のドイツの総合的なエンジン技術はソ連より優れていたと思う。しかし、ドイツは高出力のエンジンに似合うトランスミッションなどのパワーパック全体のパッケージにおいて失敗している。ソ連は自分たちの未熟さを理解していたので、高性能な操行装置を求めなかった。左右履帯の動力伝達やブレーキは単純で人間の力に頼る部分が多い。これも、ソ連の国勢に合っていたのだろう。このような、技術的なリスクへの正確な判断はドイツなどに比べはるかに的確である。
 
 ソ連は長く独裁制度のあった仮想敵国なので、その成果を正確に評価することは難しいが、第二次大戦前のソ連の成果はアメリカに匹敵するであろう。世界中が敵国と定め実際にも攻められた経験が、彼らの防衛本能を強化し(ソ連の諸外国への恐怖は、傑作戦車T-34でも満足せず、タイガー戦車との対戦前にKV-1を生産していた事実からも証明される)、共産主義・労働者の国というのが人々の希望になっていたことを見逃してはならない。ソ連ははっきりとした目的があり、それは真に切実だった。さらに、革命とその後の粛清により、そもそも余り無かった過去の遺産の影響を受けなかったために、革新的な技術に対しても冷徹な判断が行えたのだと思う。
 
 でも、戦車としての最終的な到達点からは、射撃統制装置が貧弱で、第二次大戦後半のドイツ戦車に対して十分な防御力を持っていなかったので、決して1位にはなれない。
 
 T-34 76T-34 76T-34 85

【陸軍-AFV-ドイツ-二次大戦】戦車TOP10 第10位 ケーニヒスティーゲル

 第10位  ケーニヒスティーガー(キングタイガー) 

KingTiger
ケーニヒスティーゲル(ティーガーⅡ)
 誰もが知っている、ドイツの誇る、第二次世界大戦中最強戦車です。戦車同士の1対1の戦いで、互いに同じ条件で対決すれば、どんな戦車に勝利できる戦車です。
 案外と評価が低いのは、活躍しなかったからです。活躍できなかったのは、「十分な数が無かったから」、「制空権が奪われ移動がままならなかったから」、「錬度の十分な戦車兵がいなかったから」、などの理由は言い訳にすぎません。開発者はそんな国家の状況に適した戦車を開発すべきだからです。もし、その状況を見抜けなかったなら、それは開発者の時代を見る目がなかったからです。敵より先を読むのは戦略の基本です。ドイツが二次大戦初期に電撃戦で勝利したのはそのためではなかったでしょうか。
 
 制式名称Panzerkampfwagen VI Ausf. B "Tiger II" 、制式番号Sd.Kfz.182、名称からはTigerI の後継車ですが、設計思想からみるとパンターの発展形だと分かります。対戦車用の長口径の88mm砲をそなえ、傾斜のある重装甲を備えています。対戦中の全ての戦車をアウトレンジから攻撃できる可能性を備えています。可能性なのは、実際は高度な照準技量を乗員が備えていなければ遠距離での攻撃を成功させることは難しいからです。特に、攻撃に際しては難しかったと思います。
 重量は70t近くに達し、現用のM1A2以上に重い戦車です。当時のドイツが持つ、エンジンやトランスミッションの性能の実用限界の重さだったと思われます。事実、故障が多く、軍用品としての信頼性は低く、物資の不足した劣勢のドイツにとって 燃費の悪さも大きな障害になりました。写真にも、燃料不足で放棄された車両がよく撮られています。少年時代、この戦車の写真集を好きで良く見ていましたが、大好きな戦車が強力な戦闘力を発揮することなく路肩に遺棄される姿(アルデンヌ前線の写真)は、逆に、哀れにも思えました。
 
 しかし、数ある戦車の中で、あえてTOP10に選んだのは、大好きだから、、ではなく、ここまでの攻撃力と防御力を、困難ながらも、戦場で使用できるものにまとめ上げたからです。マウス戦車はより強力ですが、決して脅威とはならなかったでしょう。しかし、この戦車は、敵に、「もしキングタイガーがいたらどうしようか」と考えさせるには十分なほど活躍していたのです。特に、西部前線では、対するM4が脆弱だったために、この戦車への対処を怠ると致命的な結果をもたらす可能性がありました。重量に比べあまりに足回りが脆弱という基本的なバランスの悪さを除くと、先進的な車体設計と、生産のしやすさへの配慮がもりこまれたデザインになっていて、非常に完成度の高い設計といえるでしょう。
 ただ、パンターが十分に強力であったことを考えると、もう少し軽く設計しても良かったのではないかと思います。