プーチンの戦争 ロシアのウクライナ侵攻

戦争は終わるのか?

昨年夏のウクライナの反攻は失敗した。ウクライナ国民や西側諸国の淡い期待を載せての作戦は、ロシアの現実に立ち返った地道な戦略と強大な軍事力の前に敵わなかったのだ。

1年ほどで作った即席の西側型機甲旅団数個では、数倍の戦力差を覆すことは出来ないのだ。

では、ウクライナには敗北しかないのか?

これは間違っている。ロシアにも勝利の道筋は見えないし、ウクライナ全域を占領するだけの戦力は持っていない。

長距離投射戦力だけでは、消耗はしても領域を確保することは出来ないからだ。太平洋戦争で米軍は徹底的な戦略爆撃を行ったにもかかわらず、日本の軍事力を圧倒できなかったのと同じことである。日本が敗北したのは、海上補給線を絶たれたからである。

ロシアはウクライナの補給線を断ち切ることは出来ないので、いくらミサイルで都市を攻撃しても、ウクライナ国民の反ロ意識を高めるだけで、戦力を削ることは出来ない。

このことはロシア・ウクライナ双方が理解している。

ウクライナは、長期戦に備え、前線を整理して、より負担の少ない兵士動員方法に転換して、弾薬や小銃、防空ミサイル、ドローンなどをNATO諸国に依存せずに調達する必要がある。ウクライナはソ連時代から高度な兵器生産能力があり、国民の教育レベルは高くエンジニアも多いのである程度の兵器国産化は可能だ。

しかし、すべての必要な兵器を自国生産することは難しいので、調達先を増やす努力が必要である。NATO西側諸国だけではなく、トルコや南アフリカ、イスラエル、イランなどからも輸入できるようにしなければならない。米国が供与する兵器には射程制限などがあるが、正面きって前線を突破できない以上、ロシア国内の後方への攻撃は必要な選択肢である。ロシアはウクライナ全土を目標にしており、ウクライナがロシア領内を攻撃できないのでは、片手を縛られて殴り合いをしているようなものだ。また、そのような米国の方針に従っていると、制裁を受けているロシアが、第三国に対して、軍事的な友好関係を結びやすいので、外交的にも不利になる。

ロシアは戦争が始まってから年間1000億ドル程度の軍事費を費やし、50万人近い兵力をウクライナへ向けている。ちなみに、米国の軍事費が約1兆ドル、日本が約500億ドルだ。ウクライナは国土が戦場なので、ほぼ全国民が動員されている状態で、兵力においては対抗可能だ。しかし、兵器や補給物資は購入しなければならないのでお金は必要。NATO諸国はこれまで10億ドル規模の軍事支援を行っているが、これはもう一桁増やす程度の支援がないと、ロシアに勝利して戦争を終わらせることは出来ないだろう。毎年100億ドル程度上積みすれば、局地的に攻勢をかけつつロシアを押し戻すことも出来るだろう。

そして、もし、ウクライナが勝利する形で戦争を終わらせたいなら、NATO諸国、EUは団結してウクライナを支援しなければならないし、ロシアには前線と後方の区別なく攻撃を仕掛けなければならない、特に東部国境周辺ロシア諸州とアゾフ海沿岸諸州への攻撃は必須である。ウクライナにすれば、抑制された攻撃などありえない。そして、原発も奪還して、核攻撃に対して、汚い爆弾(放射性物質を通常爆弾に搭載した爆弾)を使えうる状態にするためザポリージャ原子力発電所の奪還も目指すべきだ。ザポリージャは主要な攻略目標でもあり、東部諸州の防衛をあきらめてでも、この方面を攻撃すべきだろう。東部方面ではロシア領土への浸透攻撃を加え、継続的に補給線を攻撃することで、占領地の維持を困難にするほうが効率が良い。奪還した領土の面積にこだわる必要は全くない。どちらにしろ、ロシアは戦地になった街を破壊して無人地帯にしなければ占領できないので、占領したところでそこには何も残っていないのだから。

日本ができること

現行法では、直接に軍事的な関与は難しいが、ロシアがもっとも嫌がる、憲法と法律の範囲内でおこなえるウクライナ支援がある。それは北海道で、北方領土を目標とした、奪還作戦の訓練を行うことだ。

北海道で上陸演習を行えばロシアの戦力を東方へ引き付けることが出来る。
北海道で上陸演習を行う。根室半島などを仮想上陸地点として、北方展開と海上封鎖、航空支援と対空戦闘。そして、寒い海での揚陸演習を行えば、ロシアは北方領土を守る兵力を割けなくなる。

南西諸島に配備中の長距離スタンドオフミサイルやパトリオットなどの長距離対空ミサイルを北海道に配備して、弾道ミサイルを開発すればロシアへの相当の圧力になる。

中国や北朝鮮に対して行うなら、北海道でも同じことが可能なはずだ。それに20年前まで、自衛隊の最大の仮想敵はソ連・ロシアで北転演習も毎年行っていたものだ。今こそやるべきなのに、愛国者を気取っているだけの自民党の政治家は本当は売国奴(国より自分の利益優先)なので、プーチンが本当に嫌がることはやらない。自衛隊の参謀も進言しないので、彼らも同類であることが分かります。マスコミが指摘しないのは、軍事の知識がないからだろうな。

戦争が終わる日

最近のメディアの論調では、ロシア軍が優勢で長期戦になればロシア軍有利などと報じていますが、それは間違いです。

ウクライナにとって戦場は祖国であり古郷、かれらは侵略者から家を守るために戦っているので、士気が高い。

さらに、自国で戦っているということは、ゲリラ戦や諜報作戦において有利である。ロシア軍は戦場で補給できないので、国境から離れた砲撃の射程外から長い補給線をつかって補給しなければならない。この補給の困難さが、今、ロシアがロシア本土から近い東部諸州で攻勢をかけている理由の一つである。

さらに、核戦力を抜きに考えれば、ウクライナの国力、軍事力はロシア軍の半分から、少なくとも3分の1程度の戦力を有している。ロシアはかつて兵力差で数十分の1しかなかったアフガニスタンで敗北し、特殊部隊を中心とした精鋭部隊で戦った第1次チェチェン戦争では敗北している。多少の改良があったとしても、基本的に敵対的な国民の他国を占領し続けるのは、現在の社会では難しいのだ。これは例え、米国の軍事援助が少なくなったとしても、ロシアがウクライナ全土を占領するのは無理だろう。それこそ、欧米諸国がウクライナへの軍事援助を完全にやめない限り不可能だ。

ポーランドとバルト3国は支援をやめない。

これらの国は、ロシアの次の目標になっているので、絶対に支援をやめない。フィンランドもそうだ。これらの国の支援だけでも、国境地帯に逃げ込んだウクライナ軍の保護は可能だし、小火器を中心とした支援なら十分に行えるだろう。ドローンや、小型SAM、小型ATMなどが十分に有効な支援になるはずだ。

つまり、ロシア・ウクライナ両方が戦争をやめたいと思わない限り戦争は今後も何年も続く、トランプが大統領になっても、ウクライナは戦いをやめない。しかし、勝利することは難しい。少なくともこれまでとは桁の違う支援を行い、ウクライナは制限なしの全面戦争を覚悟しなければ勝利という形での終戦は難しいかもしれない。

まあ、こんな当たり前な結論だけだと面白くないので、万が一、ウクライナが短期に勝利を収めるとすればどんな方法があるだろうか?それは次回の記事で考察してみたい。

コメントを残す